牧師、バイカー、鮨職人として。。。シェア from LA
第34話 コロナ、ロックダウン、妻の事故
⑦「救急活動開始」
そうこうするうちに消防車一台と救急車一台、CHP(カリフォルニア・ハイウェイ・パトロール)のパトカー2台とレッカー車2台がやって来た。まだ妻はろれつが回らず記憶も飛んでいたものの、少しずつ正気を取り戻しつつあったが、何気なく彼女の座っているシートの背もたれを見ると何か濡れている。薄暗がりに加え黒い座席なので見分けがつかない。触ってみると、「ベチョ。」 どす黒い血が付いた。「ヤバイ!頭頂部から出血してる!」 思わず血の気が引いた。
喧噪の中、救急隊が作業を始め妻を診断し、CHPの警官は私に質問しながら書類作成を始めた。私は時おり妻のほうを見やりつつ散乱した所持品をかき集め、病院へ行く準備を始めたが、又しても驚愕すべきことを聞かされた。救急隊院の一人が「アンタは救急車に乗って行けない。」とポツリ。「何だって?」と聞き返すと「コロナのせいで救急車に乗れるのは患者だけ。」 チッ、またコロナだ。「じゃあ、どこの病院か教えろ」と尋ねると「知らん」と言う。まだ行く先が分からないので警察に電話して自分で調べろだとさ。腹わたが煮えくり返りそうになる中、今度はCHPから「アンタはここからどうやって家へ帰るんだ?」と聞かれた。
そりゃそうだ。病院へ行くにしても帰宅するにしても、私を”迎えに来た”はずの妻は重症、車は無くなった。誰か呼ばなくてはならない。すぐさま御霊に示され教会メンバーのアシュリー兄の顔が浮かんだ。「そうだ!彼はこの近所だ。」と電話をしたところ、彼もロックダウン中で自宅にいたためすぐにつながり来てくれることになった。そこへガブリエルが血相変えて飛び込んで来た。「アンタのバイクを運ぶトラックが来たよ!」
そうだった。忘れてたが自分のバイクも陸送せねばならない。しかし、もはや“家には誰もいない“ので、急遽いつも世話になっているバイク屋へ運んでもらうことにしてバタバタとバイクを積み込んだ。
「じゃあボクはもう行くから。」と彼。立ち去ろうとするガブリエルに私はハッキリと言った。「どうだい?見ただろう。これが信仰者の生き様さ。俺はフツーのオッサンで、今回は悲劇に見舞われた。信仰者の人生とは決して楽じゃない。でも、私たちには神である主がついておられる。だから結果がどうあろうと真の信仰者は必ず乗り越えることが出来る。今回もそうさ。君が本当に心から神を信じることが出来るように期待してるよ。」彼は「ありがとう」とグータッチをして帰って行った。言いようのない力と平安が私を覆い始めていた。同時に先ほどまで感じていた暗い影が少し薄れていることに気付いた。
「たとい、死の陰の谷を歩くことがあっても、私は災いを恐れません。
あなたが私と共におられますから。」 詩篇23篇4節
まさに聖書のこの言葉どおりの雰囲気であった。主に在る反撃が始まろうとしていた。。。 9-28-2020