「赤い夏」事件、1919年4月頃
新 もの言う牧師のエッセー・・・第379話
コロナは警告する 全十話⑨「 1世紀前 」
コロナ後の世界を表す”ニューノーマル(新常態)“なる造語も登場したが、そんなものが果たしてあるのだろうか。だいいち、そもそもこれまでの世界は”ノーマル“と言えるのか。コロナと人種問題、経済の失速に揺れる現在、スペイン風邪と暴力と経済のクラッシュが荒れ狂った1世紀前を想起する人は多い。「世界最終戦争」と呼ばれ、約2000万人の死者を出した第一次世界大戦が、推定約5500万人の死者を出したスペイン風邪の猛威のせいで急に終わりを告げた。「戦争が出来なくなった」のだ。
このどさくさの最中にロシア革命が起こり、世界最初の社会主義政権発足したが、元はと言えば大戦での敗北や社会不安から労働者や兵士が蜂起したことに始まる。いっぽうアメリカでは猛威を振るうパンデミックと雇用不安から「赤い夏」事件が発生し、多くの白人が暴徒化し黒人を襲撃、リンチにかけられ焼き殺される人などが続出。他方黒人も反撃し、これが黒人が白人の攻撃に抵抗した初めてのケースとなった。
また、⼤戦の講和会議に出席中のウィルソン米大統領もスペイン⾵邪にかかり、闘病で気⼒を失った彼は、強硬に反対していたドイツへの厳しい賠償要求をあっさり認め、過酷な賠償を負ったドイツはやがてヒトラーの台頭を招く。後にウィルソンは新世界秩序を掲げ 「戦争のない世界を目指し」国際連盟を提唱するが、アメリカは不参加の頓珍漢ぶり、日本の「人種差別撤廃案」も退け、全く空論のニューノーマルとなり第二次大戦へと突き進んだ。
この後、世界の中心は欧州からアメリカにシフトしたが、もろに大恐慌が直撃、日本では関東大震災が起こり、やがて世界は20世紀最大の危機を迎えることになる。これらは悪い事が悪い時に起こる典型例だ。そしてこれが1世紀前のニューノーマルである。そう言えば最近、日本や米西海岸で地震が頻発している。見ての通り、パンデミックと人種差別、経済不安と自然災害はワンセットであり 聖書預言の好例だ。イエスは警告する。
「いちじくの木から、たとえを学びなさい。枝が柔らかになって、葉が出て来ると、夏の近いことがわかります。そのように、これらのことの全てを見たら、あなたがたは、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。」
マタイによる福音書24章32-33節
さて、パンデミックの有無にかかわらず人の一生は困難と背中合わせだ。神を信じ敬うことが最大の用心となる。コロナ危機はそれを気付かせてくれた。 2020-7-25