第12話「日本語看板製作」
その後、年末に独立して自給で開拓伝道が始まり(第8話参照)、手始めに日本語の手軽な看板を作ろうということになった(第10話参照)。12月に大規模なバイカーの集会がLAの東100キロの所にあるベンチュラ市で開催されるので行くことにしたが、実はそこはエミリオが住んでいる街だ。風光明媚なビーチタウンで山があり、人口が少ない田舎で、バイクやサーフィンにもってこいの典型的なカリフォルニア的な所で、かつての古き良きサンタモニカのような場所なので、彼はゴミゴミしたLAを嫌ってそこに長く住んでいる。
集会のついでに彼にも会おうと思い電話をするとその日は仕事だという。残念だと思いつつ独立して教会を始めることや看板を作る話を何となくしたところ、「何?看板だったら俺が作れるぞ」と言ってきた。彼は家の修理などをする”ハンディマン“なのでが、「え、マジで? でもこれ日本語だよ。どうすんの?」と聞いたところ、「そんなの関係ない。日本語の原本をスキャンしてステッカーを作り それを板に張るだけ。ダチでそれを専門にしてるやつがいる。どんなのを作るのか決めてるのか?」と聞くので、「縦25センチ 横80センチ程度、白文字で背景が焦げ茶色、出来るだけ簡単で軽いのが欲しい。」と答えたら、「任しとけ。楽勝や。集会場前で会おう。届けに行くから」と事もなげに言う。
とある婦人に墨で半紙に書いていただいた原本を彼に送り、「ホンマかいな?」と疑心暗鬼で当日を迎えたが、「はい、コレ」と渡されたのは私のイメージ通りの見事な出来栄えの日本語看板!「で、おいくら?」と尋ねると、「そんなもんいらねえよ!お前はアリッサを助けてくれたじゃないか」と言ってきた。スキャンしてステッカーを作った人もおそらくアリッサの友人なのだろう。しかし私が助けたと言っても微々たるもの。いくら何でもタダというのはなどとゴニョゴニョ言ってるとさっさと帰っちゃった。そうだ。忘れてた。彼は今日は仕事の途中だった。私はただ天を仰いで神に感謝するしかなかった。そして、イエスさまの言葉
「聞いていることによく注意しなさい。
あなたがたは、人に量ってあげるその量りで、
自分にも量り与えられ、さらにその上に増し加えられます。」
マルコの福音書4章24節
を噛みしめた。しかし太っ腹な主の恵みはこんなことでとどまるものではなかった。奇蹟は続く。。。
9-8-2019