夏の日の思い出“ボンボン”(カーネル笠井)
8月
7日
夏休みの午後、母からもらった五円玉を水着のポケットにしのび込ませ、水着姿のまま下駄をはいてそこに出かけました。誰かと待ち合わせをしたりするのではなく、そこに来ている子供と遊ぶのが当たり前のことでした。また、年上の子は年下の子の面倒を見るのも当たり前のことでした。知らないお兄さんに連れられて、その川の上流から川の流れに身を任せての川下りなども楽しみました。そして、午後3時ころになると、カラン、カランと大きな音で鐘を鳴らしながら、みんなのお待ちかねのボンボン売りのおじさんがやってくるのでした。
1個五円のボンボンは、串団子をひと回り大きくしたような形のゴム風船の中にジュースを入れ、それを凍らせたものです。先っちょにあるへそを歯でかみ切り、そこから少しずつ解け出してくる冷たいジュースの味を楽しむのです。まだ冷蔵庫のなかった時代ですから、子ども達にとってこの上のない夏のおやつでした。
そんな夏の楽しみも、学校のプールが完成するとともになくなってしまいました。川のプールでは、おぼれて死にそうになった子もいました。私もすりきず等の生きずが絶えませんでした。やはり、学校のプールの方が安全で衛生的です。それと引き替えにダイナミックな川遊びもなくなり、爽快な気分で食べていたあのボンボンも、少し物足りない気分で家で食べる羽目になってしまったのです。