ペスト(正確にはペシュトだが)地区を見て回った後は、いよいよブダ地区に足を踏み入れる。 『鎖橋』を渡って直ぐを右に入ると丘への上り坂が続く。道の左手には、家々の間に階段につながる狭い路地が頻出し、徒歩でのショートカットを誘う。 車では、しばらく北へと遠回りし、有料のゲートを通らないと漁夫の砦の下の階段に辿り着けない。よって、安いツアーと思しき観光バスは、下山?側の道の途中で客待ちの停車をしている。 『マーチャーシュ教会』は、マーチャーシュ1世が15世紀にゴシック様式に改築(復元?)した教会だが、屋根の装飾には「ジョルナイ製のダイヤモンド模様の瓦」など特徴的かつ個性的な装飾がみられる。 尚、厳密にこの建造物の名称を表せば「聖母マリア聖堂」であり、現在では復興に寄与したマーチャーシュ教会の名で広く知られるが、教会ではなく聖堂である。 中に入ればゴシック様式の教会建築の典型として高い屋根と、それを支えるリブボールト。更には、それによってもたらされるステンドグラスの装飾の美しさが印象的。 ブダという王宮のある街の教会としては、そのサイズが他のゴシック様式の教会に比してこじんまりと感じるのは衆愚を集める教会ではなく、聖人を祀る聖堂だからか? この教会では多くの戴冠式が行われたので別名『戴冠教会』とも呼ばれている。 『マーチューシャ教会』の周辺は、『三位一体広場』と呼ばれ『三位一体像』が建っている。この像はペストの流行終焉を祝って建立されたもので人々の疫病に対する恐怖と、その惨禍から逃れられた喜びがあらわされている。日本風に言えば薬師如来像だ。 また、ここにも聖イシュトバーンの像があるが、他の立像と違い、こちらは騎馬像。中々勇ましいイシュトバーンである。 観光本では、これらの施設を差し置いて、もっとも有名な『漁夫の砦』は、聖イシュトバーンの騎馬像を取り囲むようにして建っている。 この砦は「漁夫ギルドの守備担当の砦」なので『漁夫の砦』と呼称されていると喧伝されているが、そもそもは『マーチューシャ教会』を改修した建築家シュレックが美観形成のために造形した物とも言われている。 いずれにしろ、この有名なネオロマネスクの砦は、ただ単にそこに存在する見晴らし台なのだが、しっかりと「入場料」を取られる。入り口の階段前には、三本アームのゲート「ぐるりんぱ」(命名)が設置され、その横にウェイト300パウンドって感じの親父が料金を取っている。と、いってもチケットがあるわけでもなく、「ぐるりんぱ」の回転数をカウントしているとも思えず、様は入場料はいくらでも誤魔化せそうな感じ。まぁ、どうでも良いか。 『漁夫の砦』からのドナウ、ペスト地区の眺めは流石に素晴らしくブダペストという街の美しさを、また、改めて認識させられた。一体、何回目だ。悔しいが、この感情は嫌いではない。