昼食を『グンデル』で取った理由は2つある。1つは先のブログに書いたように「ブダペスト来たらグンデルでしょ」というミーハーな話。もう1つは物理的地理的な理由である。次の目的地である『セーチェニ温泉』には、『グンデル』から歩いて行けるからだ。 『グンデル』を出て動物園の柵沿いに5分も歩くと左手にサーカスが見えて来る。これも、心そそられるものがあるが、お目当ては真向いの黄色いアールデコ調の建物。これこそが、ブダペスト市民の憩いの場『セーチェニ温泉』だ。スーパー銭湯の様な幟が気分を盛り上げる。 もう少し判り易く、入り易そうに作ればいいのに、と思わせる南仏風の大きな白い扉を押して(自動では無い)館内に入ると左右にチケット売り場。「一般のロッカー」と「個室」が有るらしいが、当然一般ロッカーで大人二枚。タオルとキャップを聞かれるが、朝から持って歩いているので必要なし。女房などは、朝から既に水着を下着代わりに着こんで気合満点。ハンディCATで決済すると青いリストバンドを渡された。二人で8800Hft=4400円。ブダペストの物価から考えるとべらぼうに高いが、恐らくフォーリナー価格。ここまで来て引くことも敵わず突撃。 入場リストバンド売り場の横に入り口があり、リストバンドをセンサーに当てて「ぐるりんぱ」(押しながら入る3本棒の例の奴)を押して入場すると、入り口すぐに居た兄ちゃんが「階段下りて右手が男、左手女」と英語で教えてくれる。まっすぐ行くと「個室」なので、そのチェックと案内係を兼ねているようだ。「個室」との見分けは多分バンドの色なのだろう。 で、言われるままに階段下りると昔の公営プールの通路みたいな雰囲気。右手が男って、鉄の扉しかないので通路沿いに歩いて行こうとするとタオル貸出しのおばちゃんに制止された。ハンガリー語なのでさっぱり判らん。 仕方がないので、また階段上がって、件の兄ちゃんに「男性ロッカー、どこよ」と聞くが、先ほどと同じく階段下りて右しか言わない。 またまた仕方なく階段下りて佇んでいると、何と鉄の扉がガチャリと開いて人が出てきた。うぎゃ、ここが男性ロッカーの入り口?ボイラー室のドアにしか見えんぞ。コラァ。 で、扉の中に入れば普通の「プールのロッカー」。適当なブースに入って空ロッカーを探す。ひとつのブースで片側2段で20人分くらいのロッカーがある。 ネットの書き込みで『セーチェニ温泉のロッカーは鍵の掛け方が特殊』なんて書いてあることが多いが、どの書き込みも具体的に何が特殊なのか、イマイチ判らなかった。 で、使ってみれば何のことは無い、ロッカーの扉を閉めて出っ張っているノブをリストバンドを当てて押し込めばロック、もう一度リストバンドを当てるとノブが出て来て解除という簡単なもの。ま、ひょっとすると近年自動化して、こうなったのかもしれない。 さて、水着に着替えも済んで意気揚々と「風呂」に向かうわけだが、先ずは撮影。案内の兄ちゃんに「写真撮ってもいいのか」と聞けば「OK,OK」と色よい返事。では、さっそく何枚か戴きましょうって事。ざっと撮って一度カメラをロッカーに仕舞いに戻り、再度「風呂」へ。 んー、「としまえん」か「湯ネッサン」か。まぁ、そっちが真似ているのだが。 屋外には温泉2つと真ん中に温水プール。当然、全員水着着用だが、プール以外はキャップはいらない。塑像の下から凄い勢いでお湯が噴出して居たり、観光本でおなじみのチェス盤が有ったり、なーんかテルマエロマエみたいだったり。見渡す限り日本人と言うより東洋人が居ない。 ちなみに奥の建物には左右の温泉の先から入れるのだが、入り口の足洗い場や入ってすぐのタイル張りの様子から、日本人が見れば建物の入り口ではなく、どう見ても「プールのトイレ」にしか見えない。実際、右も左も1回ずつ「なんだ、ここもトイレか」と一度入ってから出て来てしまった。構わず、ずんずん奥へ行けば、種々20以上の温泉が設えられている。 セーチェニ温泉の泉質は、単純泉という感じで酸もアルカリも硫黄も感じない素直なお湯だった。言われているほど低温でもない。良く晴れた5月の昼間だったが、寒い、冷たいという感じは無く楽しめた。屋内の浴槽には40℃程度の物も有ったので、天候が悪くても大丈夫だろう。 但し、屋外の名物チェス盤のある方の湯船(?)は、水深がかなり深く155cm程度のカナヅチ女房は「これじゃ日本人の年寄は入れないじゃない」と爪先立って怒っていた。そんな人、来ないってーの。 尚、その女房殿は温泉に入ってすぐに「ぎゃ、リストバンドが無ーい」と大騒ぎ。本人結構焦っているらしく呂律が怪しい。まぁ、このままリストバンドが無ければロッカーが開かず、着替えられず、ブダペストの街を「平たい胸族」の女が水着で歩く、と言う日本大使館から渡航許可書を取り上げられて強制送還なんて有様になること必定。 とりあえず、「今、来た道をそのままそろりそろりと探して歩け」と指示。私は現地点の周辺を探していると女房が湯船入口の近くで見つけたようだ。湯船に入って2歩くらいで無くしたらしい、これは一生の笑いネタを提供してくれた、とほくそ笑む。うひひ。 リストバンドと言えば、年配の現地の方らしい人は黄色のリストバンドをしている。恐らく、市民割引かシニア割引か、いずれにしろ半額以下になるような特典があるのだろう。この辺、社会主義時代の良い風習ともいえる。もっとも消費税は27%だが。 と、言う事で『セーチェニ温泉』は市民の憩いの場なのだが、こんな公共性の高い(てか、運営は市)施設だが、しっかりCafeにはビールも有ればワインも有る。ガンガン飲んで温泉に入れるのだ。日本も見習え。 さて、次の予定も有るので後ろ髪をひかれながらロッカーへ戻る。途中のシャワールームでタオル掛けに気が付かずタオルを手に持ってシャワーを浴びていたら、地元の爺さんが肩をたたいて「タオルは、ここ」と指で示してくれた。「サンキュー・ベリーマッチ」と言うとにっこりと笑ってボディローションのトラベルサイズみたいなのを出し、「このキャップを、こう捻ると開く」とジェスチャーで見せてくれて「それを体に塗る」とこれもジェスチャー。最後に、にっこり笑って私の手に握らせて手を挙げてシャワールームを出て行った。 うー、マジャル人良い人だぁ!感動的だなぁ。 ちなみに、見た事の無いブランドのボディローションは、メントールがきつくて偉くスース―してしまった。 さて、ロッカーで着替えて出口の前で女房を待つが、一向に上がってこない。暇なので追加の撮影を5,6枚して戻ると、ようやく女房が来た。さぁ、次へ行こう、としたら... 私のリストバンドが無い!でぇー、今あったのに。何でじゃー。 先の捜索方法でトレースすると、すぐにCafeのテーブルで見つかった。リストバンドにはロッカーナンバーが記載されるシステムでは無いので、拾ったところで使い道が実際には無い、とはいえ落し物が問題無く見つかるというのは、ハンガリーは中々民度が高いと感心した。 同時に女房への「一生の笑いネタ」が音を立てて消え去るのを実感。「セーチェニ温泉リストバンド消失事件」は単に落し物をしまくる馬鹿な夫婦ネタになってしまった。 教訓:セーチェニ温泉のリストバンドは、すぐに無くなるので注意 出口では、リストバンドを機械に投入してグルリンパを抜ける。女房と二人で「リストバンド有って良かったね」と言った事は言うまでもない。