ハンガリー最後の街は『フェルテード』。この田舎町に何があるかと言うと「ハンガリーのベルサイユ宮殿」と言われる『エステルハージ家の宮殿』がある。 勿論、この手の話は小江戸、小京都、戸越銀座という奴で本家のベルサイユ宮殿には及びもつかないのだが、ハンガリーと言う国の共産圏の時代が長かった地味なイメージからすれば、その対極にあるロココ調のベルサイユ宮殿のミニ版があるという事には興味がひかれる。 エステルハージ家はハンガリー1の大地主だったそうだが、歴史の舞台ではハプスブルク家と親交が深かったハンガリーの豪族として紹介される。フェルテードの他に2つ、計3つの宮殿が現存する。 宮殿そのものとしては、然程大きくも無く、我が家よりちょっと広いか、といった佇まい。(大嘘)それを意識してか、ホールなど広さを欲しい部屋には、鏡が効果的に配されて見た目よりも空間的な広がりを持たせている。 そして、内装はロココでロカイユ。当然、感想は「まったく、金持ちって奴は。」である。 調度品は、当時の貴族豪族が「所有する事によって自らのステータスとした」品物の数々。具体的にはオリエンタルな陶磁器や箪笥、テーブル等々。中には、山水図のような構図の金地のレリーフの部屋なんてのまであった。 実はエステルハージ家を有名にしている最大の要因は、「交響楽の父」と呼ばれたハイドンのスポンサーであった事。この宮殿では「ハイドンの間」という部屋があったが、ハイドンは実際には、この宮殿に居があったわけでは無く、近くの家に住んでいた。結局、この家の一族にとってはハイドンも又、所有する事で己のステータスを上げるアイテムの一つであったに過ぎないと思わされる。 どうも己の精神性を磨く事を高潔と定める東洋哲学と己の影響範囲の拡大が高貴とする西洋思想の差分を感じずにはいられない。 まぁ、持たざる者の僻みでもある。