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ANIMISMと冥途

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内田百閒『冥途・旅順入城式』岩... 内田百閒『冥途・旅順入城式』岩波文庫(1990)





ANIMISM(アニミズム)とは,
森羅万象にさまざまな霊的存在
すなわち神霊,精霊,妖精,妖怪などが宿るとする観念である。

どこにでもありそうなありふれた風景の中に
ふと「異界」を感じることがある。

怪異現象うんぬんといった,
いかにもおどろおどろしげなことではない。

なじみぶかい,いつもの場所や時間や事物。
なんということのない風景や時間のなかに
異なる世界への入口が,ぽっかり口をあけている。

観るものすべてが妙に不気味なものになり
異様な存在感を帯びはじめる。

鮮明には認識できない。
つかまえられるようでいて,決してつかみきれない。
ひしひしと,えもいわれぬ気配のみが,ただ迫ってくる。

子供の頃,しばしばそういう体験した。
風景の中に,強くそれを感じることがあった。

美しい風景を撮ろうとしているのに
どうしても違和感が浮上してくる。
いったいこれはどういうことなのだろうかと思い続けてきた。

ところがある日突然,ありきたりな風景以外
フィルムにはなにも映らなくなった。


*****

内田百閒の『冥途』を若い頃から愛読してきた。
幽霊や怪物や超常現象といったたぐいのものとは
もっと別な範疇にある「怖さ」というもの。
自分がしばしば感じている
あの奇妙な違和感に通じるものがあるような気がしていた。

折にふれて読み返す,この小説とも随筆とも寓話ともつかぬ
どうにも不思議な珠玉の文藝作品。
その岩波文庫版の解説を,かの種村季弘が書いている。
表紙カバーの見返しには
そのエッセンスがこんなふうに記されている。


  いまかいまかと怯えながら,
  来るべきものがいつまでも現われないために,
  気配のみが極度に濃密に尖鋭化してゆく


シリーズ ANIMISM を通して私は
自然界の諸々の事象と向き合う際にしばしば感じ,捉えてきた
かそけき気配のようなものを
自身のANIMISM的感覚の表現としてまとめてみようと思った。

若い頃ほど顕著ではないにせよ,森の中に身を置いていると,
初老の域に達したいまでも,時としてその気配に
ぞくりとした思いを味わうことがある。

自然をサイエンティフィックに
そしてアーティスティクに「観る」「解する」というところからは
明らかに逸脱した感覚であり,それを表現しようとすると
どうしても「あいまいなもの」にならざるをえない。

しかしこうしたこともまた
まごうことなき豊穣なる自然の片鱗なのであり,
森や原野や海辺を逍遥する愉しみのひとつなのであると
理屈でなく身心でもって感じるのである。







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ANIMISM  冥途の蝶

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ANIMISM  冥途の蝶




盛夏の森の隅の暗がりで
ひっそり咲いていた鵯花
そこへやってきた浅葱斑という大きな蝶

どこか陰鬱な感じのする花のまわりを
とまっては飛び,飛んではまたとまる

緩慢なのか,すばしこいのか
よくわからない不思議なうごき
なにかの魂がするりと脱けだしてきて
気ままに遊んでいるような

ひらひら,ひらひらと落ち着かない
けれど次第に眠気をいざなうような舞い

凝視していたら,そのままどこか別の世界へ
導かれていくような気がしていた

なあんだ,異界への入り口は
こんなところにもあったのか

不意に,蝶はまた花に身をあずけた
おおきなしずくのようだった

かそけきものを,凝視せよ



冥途の蝶
© Daisuke Kawai



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ANIMISM   凍原

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ANIMISM   凍原



茫漠たる虚無と
底知れぬ幻滅をかかえながら
世の果てへの旅が
まだまだ続くのだろうか



凍原
© Daisuke Kawai



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ANIMISM  天昇

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ANIMISM  天昇


森の底から湧き上がった水雲が
粛々と天界へ還っていくのである


天昇
© Daisuke Kawai




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ANIMISM  湧雲

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ANIMISM  湧雲



太古の森の底から
水が雲になって湧き上がってくる

ドラマチックな神事が行われている
壮大にして厳粛な光景に息を呑む



湧雲
© Daisuke Kawai


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ANIMISM 愁花

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ANIMISM 愁花


枯れた花が愁いをただよわせているように見えるのは
おのが老いを愁いる,観る者の心の現れなのだろうか

枯れていても,美しい花でいられる
そういうことを野辺の花におそわった
おのれをささえる筋さえ
ちゃんと通っているならば



愁花
© Daisuke Kawai

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ANIMISM 薄野ⅲ

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ANIMISM 薄野ⅲ



不意に,以前秋の日の夕暮れに見た
枯尾花の広がる情景が目に浮かんだ

枯野の美しさは
碧い季節の美しさとは,また別のもの
どこかものがなしさがただよう
夢のような美しさであることには
ちがいがないのだけれども



薄原
© Daisuke Kawai


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ANIMISM 草の夢

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ANIMISM 草の夢



森の底を覆うトクサの群れが
とても幻想的な夢を見ていた

うとうととまどろむ姿に
観る者もまた酔わされていく

夢を見るように逝けたらいい


草の夢
© Daisuke Kawai


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ANIMISM 森の苑ⅱ

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ANIMISM 森の苑ⅱ



ひっそりした森だった
明るい陽ざしに満ちているようであるのに
明暗がはっきりわかれ
木洩陽を受けたトクサの群れが浮かび上がっている

これまでの来し方,そしてこれからの行く末を
無言のまま問うてくる,不思議な沈黙があった



森の苑ⅱ
© Daisuke Kawai


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ANIMISM 森の苑

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ANIMISM 森の苑


妖精の森に迷い込んだような気がした

魂の浄化

こんなところで静かに息を引き取ることができたら
こんなところでゆっくりと朽ち果てることができたら
どんなにか幸せなことだろう



森の苑
© Daisuke Kawai

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ANIMISM 裂部

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ANIMISM 裂部


苔むしたその亀裂から,何かが生まれてくるような気がした。



裂部
© Daisuke Kawai



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ANIMISM 一葉

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ANIMISM 一葉

最後の一葉か。
されど,それは常緑樹の葉なのだった。

はらりと落ちそうでいて,しっかりとついている。
まだ落ちぬ、意地でも落ちるか。



一葉
© Daisuke Kawai

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ANIMISM 仏花

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ANIMISM 仏花



末法の世の片隅で,それは小さな仏さまに見えた。



仏花
© Daisuke Kawai





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ANIMISM 樹目

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ANIMISM 樹目



森のなかで,ふと誰かに見られていると思うことがある。
しかしそのまなざしをとらえることはできない。

いにしえの孔の痕ひとつ。
樹のまなざしのようにも見える。
ずっと凝視してきたのだろうか。



樹木
© Daisuke Kawai

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