1. F1志向のデザインや操作性への不満
フェラーリのハイパフォーマンスカーは、そのステアリング周りのデザインがF1カーを模倣していることで知られています。確かに、F1ではステアリングの切れ角が小さく、固定式パドルは理にかなっています。しかし、一般道では事情が異なります。右折や左折ではステアリングを90度以上回すこともあり、その際には固定式のシフトパドルは手の届かない場所に移動してしまいます。ステアリングを持ち替えるたびに、指先でパドルを探す手間が発生するのです。
さらに、ステアリング上のウインカースイッチも不便です。このスイッチは最低でも3回点滅する仕様になっており、細かい点滅操作が求められる場面では使いにくさを感じます。「フェラーリを操るドライバーに操作の迷いはない」と言いたいのかもしれませんが、これが日常使いには非常に不向きです。フェラーリだけを使う生活ならともかく、複数の車を所有している場合、迷惑でしかありません。かっこよさやF1イメージを追求した結果、実用性を犠牲にしていると言わざるを得ません。
2. 豪華すぎる内装と高額なオプション
F8のインテリアは高級素材や緻密なステッチで仕上げられ、非常に豪華です。しかし、その豪華さがF1のシンプルさや実用性と真逆の方向性に感じられます。シートに座ると、やる気がみなぎるような感覚よりも、高級サルーンに乗っているような感覚が支配します。
また、フェラーリのオプションの価格には驚かされます。カーボン素材のパーツは100万円を軽く超え、LEDステアリングなどもバカみたいに高額です。オプション価格が1000万円を超えるクルマもざらにあり、車両本体価格を考えると、傷や消耗を恐れて走らせることをためらうシーンもあるでしょう。
3. リセールバリュー重視の所有文化
フェラーリでは右ハンドルが無料で選べるにもかかわらず、圧倒的に左ハンドルが選ばれています。これは運転のしやすさではなく、国際的なリセールバリューを意識した結果です。左ハンドルの方が海外市場での需要が高く、将来的な売却を見据えた選択となっています。
また、塗装色やオプションもリセールを考えて選ばれることが多く、中古車市場では走行距離を極端に抑えられた中古車が出回っています。1000km走ると査定が100万円下がると言われる中で、ドライブを楽しむこと自体が難しくなっています。これでは、クルマ本来の走るという喜びを大きく損なう要因ではないでしょうか。
4. 所有することの意味
フェラーリのエンジン性能、サウンド、ハンドリングは素晴らしいものです。しかし、多くのオーナーがリセールバリューや他者からの評価を優先し、自分自身の満足を後回しにしているように感じられます。また、オーナー会に参加することや、社会的なステータスのために所有している人も少なくないのではないでしょうか。
フェラーリを所有することが、純粋に車を楽しむことよりも、他者に対する自己表現や資産価値の管理として捉えられている点に、僕は大きな違和感を覚えます。
5. 結論
フェラーリを所有することは、資産運用のような気分に近いものがあります。リセールを考え、走行距離を気にし、見栄を張るための所有。それが「豊かな生活」と言えるのでしょうか? 言葉を選ばないのであれば、むしろ貧乏くさい。
僕は、この文化に馴染めない自分を発見しました。ゴルフを始めたときと同じように、どうやら僕は「自分の住むべき場所ではない世界」に足を踏み入れたのかもしれません。