記事検索

フリースペース

【編集指針】ご訪問ありがとうございます。 ■当サイトはEBMを意識しながら薬剤師が関わる地域医療をテーマにその実践記録や医学文献の紹介を目的としています。一定の学術的見解または治療方針を示すものではありません。 ■当サイトが提供する医療情報は医師の診療や薬剤師の日常業務を支援する目的で発信しているものを含みます。 ■当サイトが提供する情報の最新・正確な内容につきましては原著論文等でご確認頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。 ■当サイトの内容は管理者個人の意見であって、所属施設の意見や立場を代弁もしくは表明するものではありません。 ■EBMや医学論文に関する基本的な解説は日経DI オンライン:「症例から学ぶ 薬剤師のためのEBM」(要無料会員登録)に掲載させていただいております。合わせてご活用ください。

【おすすめWEBサイト】 CMEC-TV/TOPページ 地域医療ジャーナル 地域医療日誌 by COMET 地域医療日誌 栃木県の総合内科医のブログ 地域医療のための総合サイト hidex公式ブログ『はぐれ薬剤師のココロ』 ■旧ブログ Blogger版 地域医療の見え方 薬剤師の地域医療日誌 薬剤師のケースレポート日誌 エビデンスの見え方 ■薬剤師のジャーナルクラブ JJCLIP公式フェイスブックページ当ブログの記事検索 ■英語論文執筆者のための英文校正サービス エナゴ

ブログスレッド

  • PPIとせん妄リスクに関する考察[地域医療の見え方.2016.Dec.16;2(76) ]

PPIとせん妄リスクに関する考察[地域医療の見え方.2016.Dec.16;2(76) ]

スレッド
せん妄は、多因子病因による認知機能の急激な低下であり、死亡リスクの増加、入院の長期化、認知症発症、長期ケアセンターへの入所と関連するといわれている。

Han JH.et.al. Delirium in older emergency department patients is an independent predictor of hospital length of stay. Acad Emerg Med. 2011 May;18(5):451-7. PMID: 21521405

Fick DM.et.al. Delirium superimposed on dementia is associated with prolonged length of stay and poor outcomes in hospitalized older adults. J Hosp Med. 2013 Sep;8(9):500-5. PMID: 23955965

Inouye SK.et.al. Delirium in elderly people. Lancet. 2014 Mar 8;383(9920):911-22. PMID: 23992774

Noriega FJ.et.al. Incidence and impact of delirium on clinical and functional outcomes in older patients hospitalized for acute cardiac diseases. Am Heart J. 2015 Nov;170(5):938-44. PMID: 26542502

[H2受容体拮抗薬(H2RA)とせん妄リスク]
H2RAはコストもそれほど高くなく、実臨床では汎用されているように思われる。ファモチジンはOTC医薬品としても販売されており、本邦では馴染みの深い薬剤ではなかろうか。ところがH2RAはせん妄を引き起こしうる薬剤の一つでもあり、米国Beers Criteriaではせん妄の症状を誘発、悪化させる可能性があるため、せん妄のリスクが高い高齢者は、抗コリン薬、ベンゾジアゼピン、コルチコステロイド、H2RA、鎮静催眠薬などの薬物を避けることを推奨している。

By the American Geriatrics Society 2015 Beers Criteria Update Expert Panel. American Geriatrics Society 2015 Updated Beers Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults. J Am Geriatr Soc. 2015 Nov;63(11):2227-46. PMID: 26446832

これはわが国における「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」でも同様の位置づけである。実際、ファモチジンでは複数の症例報告が存在する。

Catalano G.et.al. Famotidine-associated delirium. A series of six cases. Psychosomatics. 1996 Jul-Aug;37(4):349-55. PMID: 8701013

またシメチジンからファモチジンへの切り替え時にせん妄を発症したケースも報告されている。

Yuan RY.et.al. Delirium following a switch from cimetidine to famotidine. Ann Pharmacother. 2001 Sep;35(9):1045-8. PMID: 11573854

薬剤個別にせん妄リスクが異なるのだろうか。H2RAの中枢移行性はせん妄リスクの程度に影響を及ぼすかもしれない。

[PPIとせん妄リスク]
同じ消化器系用剤でも、薬理作用が全く異なるPPIではせん妄リスクの懸念はないのだろうか。H2RA群30例(65.2歳)、PPI群30例(65.2歳)を比較して、せん妄リスクを検討したFujiiらによる後ろ向き研究では、せん妄の発症はPPI群で有意に低かった。(p = 0.047)  H2RAからPPIへの変更でせん妄発症リスクが低下できる可能性があると結論されている。

Fujii S.et.al. Comparison and analysis of delirium induced by histamine h(2) receptor antagonists and proton pump inhibitors in cancer patients. Case Rep Oncol. 2012 May;5(2):409-12. PMID: 22949902

ところが、2016年にはせん妄のリスク因子を調査した横断研究が報告されており、
・転院(オッズ比2.78[95%信頼区間1.54~5.01]
・認知症(オッズ比2.29[95%信頼区間1.44~3.65]
・せん妄既往(オッズ比2.23[95%信頼区間1.47~3.38]
・転倒既往(オッズ比1.76[95%信頼区間1.17-2.64]
・PPI使用(オッズ比1.67[95%信頼区間1.11~2.53]
とPPIがリスク因子に挙げられている。
Otremba I.et.al. Delirium in the geriatric unit: proton-pump inhibitors and other risk factors. Clin Interv Aging. 2016 Apr 4;11:397-405. PMID: 27103793

PPIにおいてもせん妄の症例報告はあるようだ。
Heckmann JG,.et.al. Omeprazole-induced delirium. J Neurol. 2000 Jan;247(1):56-7. PMID: 10701899

そのメカニズムであるが、PPIの中枢への直接的影響というよりは低Na血症に誘発された精神症状かもしれない。

Bebarta VS.et.al. Proton pump inhibitor-induced rhabdomyolysis and hyponatremic delirium. Am J Emerg Med. 2008 May;26(4):519.e1-2. PMID: 18410837

また、PPIは低Mg血症を引き起こす可能性が指摘されており、低Mgがせん妄を誘発している可能性も考えられる。

Kieboom BC.et.al. Proton pump inhibitors and hypomagnesemia in the general population: a population-based cohort study. Am J Kidney Dis. 2015 Nov;66(5):775-82. PMID: 26123862

Caplan JP.et.al. Refeeding syndrome as an iatrogenic cause of delirium: a retrospective pilot study. Psychosomatics. 2010 Sep-Oct;51(5):419-24. PMID: 20833941

さらにPPIは相互作用を引き起こしえる薬剤である。ベンゾジアゼピンや抗うつ薬との相互作用がせん妄を引き起こしているのではないかという指摘もある。

Zhu LL.et.al. The association between gastric acid inhibitors and delirium in geriatric inpatients: implications for clinical practice and research. Clin Interv Aging. 2016 Jun 16;11:797-9. PMID: 27366056

特にCYP2C19を阻害するオメプラゾールではこのような相互作用が起こりやすいと考えられ、また抗うつ薬との相互作用では併用されるPPIの種類によって相互作用リスクが変わるかもしれない。

Gjestad C.et.al. Effect of proton pump inhibitors on the serum concentrations of the selective serotonin reuptake inhibitors citalopram, escitalopram, and sertraline. Ther Drug Monit. 2015 Feb;37(1):90-7. PMID: 24887634

今後、薬剤ごとの比較解析が期待される。

ワオ!と言っているユーザー

  • ブログルメンバーの方は下記のページからログインをお願いいたします。
    ログイン
  • まだブログルのメンバーでない方は下記のページから登録をお願いいたします。
    新規ユーザー登録へ