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地域医療の見え方  2016.Jul.20;2(74)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱戦略-

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[イントロダクション]

ベンゾジアゼピン系薬剤は漫然投与がなされやすい薬剤である。加齢そのものがベンゾジアゼピン系薬剤漫然投与のリスクファクターだと言われているが、米国においては医師における公衆衛生上の問題過小評価が指摘されている。
※J Am Geriatr Soc. 2000 Jul;48(7):811-6. PMID: 10894322
※J Gen Intern Med. 2007 Mar;22(3):303-7. PMID: 17356959

このような漫然投与はベンゾジアゼピンの常用量依存をきたす。古典的にはベンゾジアゼピン退薬症状は、内服が8か月以内では5%であったのに対し、内服が8か月以上に及ぶと43%までにも達することから8か月以上の内服は常用量依存形成のリスクと言われている。
※JAMA. 1983 Aug 12;250(6):767-71.PMID: 6348314

もちろん高用量、継続投与はリスクファクターであるため、本来であれば必要最小量を用いるべきことは明らかである。
※臨床薬理. 1996;27(2):465-46.

しかし、すでに1年以上ベンゾジアゼピン系薬剤を内服しているような症例では、多くの場合で常用量依存が形成されており、その離脱は容易ではない。本稿ではベンゾジアゼピン系薬剤の離脱戦略についてまとめる。[]

[ベンゾジアゼピン系薬剤離脱戦略]

ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱戦略は大きく
①ベンゾ以外の薬剤へ代替
②ベンゾを漸減
③ベンゾのリスクについてなど教育的介入
④認知行動療法
に分けられ、これらを単独もしくは組み合わせて用いる。

英国で行われたベンゾジアゼピン系薬剤離脱に関するランダム化比較試験のシステマティックレビューによれば、家庭医からのベンゾジアゼピン系薬剤の減量もしくは中止に関する手紙、情報提供、面談など、最小限の介入を受けると、標準ケアに比べて約2倍中止・減量が多いと報告されている。
※Br J Gen Pract. 2011 Sep;61(590):e573-8. PMID: 22152740

このレビューに組み入れられたのは3つのランダム化比較試験ではあり、3か月以上ベンゾジアゼピン系薬剤を使用している18歳以上の615人が解析対象になっている。主な介入は長期使用における懸念について、潜在的な副作用について、中止にあたり離脱症状が出ないような漸減方法のアドバイスなどが含まれている。その結果、ベンゾジアゼピン系薬剤減量相対危険は2.04[95%信頼区間1.5~2.8]、中止は2.3[95%信頼区間1.3~4.2]、NNT12となっている。

減量、中止介入を試みると、通常ケアに比べて約2倍の中止、減量が期待でき、そのNNTは12人というところであるが、以降、個別に戦略の実効性を見ていこう。

[代替+漸減戦略]
6か月以上ベンゾジアゼピン系薬剤を使用(平均4.15年)している44歳以上の51人を対象に、2~4週毎に用量を25%ずつ減量し、ヒドロキシジン25mg/日などを補助的に使用して離脱を試みた前後比較研究が報告されている。その結果、6か月後、80.4%でベンゾジアゼピン中止に成功し、64% が1年間、離脱を維持。またうつ症状スコアやQOLスコアの改善も示唆と報告されている。
※BMC Res Notes. 2012 Dec 13;5:684. PMID: 23237104

ヒドロキシジンの抗コリン作用には注意が必要であろうが、2~4週毎に25%ずつの減量+代替戦略はベンゾジアゼピン系薬剤離脱の安全な離脱に有用であろう可能性が示されている。

[教育的介入+漸減(6か月有用性)]
約10年内服している高齢者303人(平均75歳)を対象としたクラスターランダム化比較試験で教育的介入(リスクや漸減方法)(148人)と通常のケア(155人)を比較し、6か月後のベンゾジアゼピン中止を検討した結果、教育的介入群で8.3倍多い中止が多いと報告されている。(調整オッズ比8.3[95%信頼区間 3.3~20.9])NNT4.35人であり約5人に1人は成功することが示されている。
※JAMA Intern Med. 2014 Jun;174(6):890-8.PMID: 24733354

この結果は6か月という短期間の有用性であり、その後もベンゾジアゼピン系薬剤が中止できているかどうかについては不明である。

[教育的介入+漸減(1年有用性)]
6か月以上内服している532人(年齢中央値64歳)を対象にしたクラスターランダム化比較試験で、診察する医師に対する教育的介入および2~3週ごとに10~25%ずつ減量する介入と通常ケアを比較しベンゾジアゼピン中止を検討した結果12か月後のベンゾジアゼピン中止は約3倍多いと報告されている。

※Br J Psychiatry. 2014 Jun;204(6):471-9. PMID: 24526745

本研究ではプライマリケアにおいて隔週ごとの経過観察により漸減を行う構造化教育的介入(structured educational intervention with gradual tapering backed up fortnightly follow-up:SIF)と、書面説明で漸減を行う構造化教育的介入(structured educational intervention supported by written instruction:SIW)の2つが検討されている。

研究に参加した家庭医は、通常ケア、SIF,SIWの3群にランダム化され、研究の概要について1時間の講義、SIF及びSIW群の医師は、ベンゾジアゼピンの適切な減量について追加で3時間の講義を受講。また,SIF群の医師は隔週ごとの経過観察についての講義を更に30分受けた。減量は2~3週ごとに10~25%ずつ段階的に行われ、ベンゾジアゼピンから長時間作用型薬剤への切り替えは許可されている。

2ヶ月後のベンゾジアゼピン中止はSIW群3.01[95%信頼区間2.03-4.46]、SIF群3.00[95%信頼区間2.04-4.40]。SIF群とSIW群の間で有効性に有意差はなかった。

[教育的介入+漸減(3年有用性)]
介入から6ヶ月、そして1年におけるベンゾジアゼピン中止における介入の有用性は示されているが、さらに長期となるとどうであろうか。PMID: 24526745(上記研究)の長期追跡が出ている。
※Br J Gen Pract. 2016 Feb;66(643):e85-91. PMID: 26823269

532人を対象とした離脱戦略検討であったが36か月後のベンゾジアゼピン中止割合は以下の通りであった。
・SIW群66/168 (39.2%) 相対危険1.51 [95% 信頼区間1.10~2.05]
・SIF群79/191 (41.3%) 相対危険1.59 [95%信頼区間 1.15~2.19]
・標準ケア 45/173 (26.0%) (reference)
全体では131/188 (69.7%)の症例で離脱を維持していたと報告されている。介入が成功すれば約7割で3年間は維持できる可能性がある。またこの検討でベンゾジアゼピンの中止で不安、抑うつ、睡眠の質に大きな影響はなかったと報告されている。

[まとめ]
ベンゾジアゼピン系薬剤の離脱には2~4週ごとに10%~25%の減量
患者、処方医そうほうともに教育的介入は有用
代替として抗うつ薬や抗ヒスタミン薬なども考慮可能である。
離脱介入成功者の7割は3年ほど離脱を維持できる。

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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[文献]サイクリングで2型糖尿病は予防できるか(コホート研究PMID: 27403867)

Rasmussen MG.et.al. Associations between Recreational and Commuter Cycling, Changes in Cycling, and Type 2 Diabetes Risk: A Cohort Study of Danish Men and Women. PLoS Med. 2016 Jul 12;13(7):e1002076. PMID: 27403867
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27403867

[背景]サイクリングは世界の多くの国において、公衆衛生上の問題に対する潜在的な改善をもたらしうる娯楽的な活動であり、通勤スタイルである。本研究の目的は娯楽や通勤におけるサイクリングと2型糖尿病発症リスクの関連をデンマークのDiet, Cancer and Health cohort studyにより検討することである。

[方法と結果]
1993年~1997年において50歳から65歳で2型糖尿病、あるいはその他の慢性疾患を有さない24623人の男性と27890人の女性が検討された。またサイクリング習慣や生活習慣についてアンケート調査された。

Cox比例ハザードモデルを用いて、2型糖尿病発症のリスクファクターで交絡補正し、娯楽や通勤でのサイクリングと糖尿病発症リスクの関連を検討した。

平均14.2年の追跡期間中、6779例が糖尿病を発症した。多変量解析による調整ハザード比(95%信頼区間)は週のサイクリング時間(分)が0, 1-60, 61-150, 151-300, >300で、それぞれ1、0.87 (0.82, 0.93), 0.83 (0.77, 0.89), 0.80 (0.74, 0.86) 0.80 (0.74, 0.87) であった。

サイクリングの季節ごとの解析ではサイクリングをしない人に比べて、夏季0.88 (0.83, 0.94),冬季0.80 (0.76, 0.85)であった。

[結論]通勤や娯楽のためのサイクリングは2型糖尿病発症リスクを低下させる。

[文献]降圧療法の圧倒的ベネフィットの裏には…(メタ分析PMID: 27228434)

Thomopoulos C.et.al. Effects of blood pressure lowering treatment in hypertension: 8. Outcome reductions vs. discontinuations because of adverse drug events - meta-analyses of randomized trials. J Hypertens. 2016 Aug;34(8):1451-63. PMID: 27228434
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27228434

[背景]
これまでに報告されている降圧療法に関するランダム化比較試験のメタ分析は高血圧患者の心血管アウトカム発症リスク低下に関する圧倒的なエビデンスを提示する。しかし、降圧療法における有害イベントについてはシステマティックに検討されていなかった。

[目的]
降圧療法に関するランダム化比較試験において、治療に関連した有害イベントや治療に余®もたらされる死亡や疾病状態のリスク低下ベネフィットに見合う有害事象の負担を検討する。

[方法]降圧療法に関するランダム化比較試験(実薬対プラセボもしくは低用量治療)70研究、255970例を解析対象とした。有害事象の指標としては治療の有害事象に起因する永続的な治療中止とした。収縮期血圧/拡張期血圧=10/5mmHgで標準化したリスク比、95%信頼区間を算出。ランダムエフェクトモデルを用いて、7つ非致死的アウトカムと有害事象による治療中止を検討した。

[結果]
44のランダム化比較試験のデータは有害事象による治療中止もしくは6つ以上の重大なイベントを報告していた。(解析対象179949例)

50のランダム化比較試験において、主要な心血管イベント24%減少は、治療中止の89%増加に関連していた。5年間で1000人当たり、33の主要な心血管イベントを予防する代わり84件の中止をもたらしていた。

Metaregression analysis によれば、アウトカム減少や治療中心増加は、収縮期血圧、拡張期血圧の低下範囲に関連していた。

[結論]降圧療法による有害イベントの増加は血圧低下の圧倒的ベネフィットを否定するものではないが、降圧療法時には常に議論されるべきであろう。

[文献]H2RAはせん妄発症に関連している可能性が高いし、PPIという選択でせん妄リスクを回避できるかもしれない。(比較研究PMID: 22949902)

Fujii S.et.al. Comparison and analysis of delirium induced by histamine h(2) receptor antagonists and proton pump inhibitors in cancer patients. Case Rep Oncol. 2012 May;5(2):409-12. PMID: 22949902
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22949902

[目的]H2受容体拮抗薬は薬剤関連せん妄を引き起こすことが報告されている。せん妄を発症に関して、食道癌の外科的治療後の吻合部潰瘍予防にH2受容体拮抗薬による治療とPPIによる治療を比較した。

[方法]せん妄の発症と重症は後ろ向きに比較した。H2RA群30例(65.2歳)、PPI群30例(65.2歳)せん妄の診断はDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-IV-Textに準拠した。せん妄重症度はDelirium Rating Scale (DRS)で評価した。

[結果]せん妄の発症はPPI群で有意に低かった。(p = 0.047) せん妄を発症したH2RA群の11例において、H2RAを中止するとDRSスコアは有意に低下した。(p = 0.009).H2RAを服用していた3人の患者では中止により、3日後のDRSスコアが中止前と比べて50%以上も減少した。

[結論]H2RAからPPIへの変更でせん妄発症リスクが低下できる可能性がある。

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3. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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いよいよ夏本格という感じですが、なかなかブログ記事をまとめる時間がないのが悩み…。隔週更新は最低限維持していきたいと思います。

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