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地域医療の見え方  2015.Nov.18;1(44)

スレッド
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1. CLINICAL EVIDENCE SUMMARIES
-ゾルピデムと睡眠関連摂食障害-

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[ポイント]
■ゾルピデムと睡眠関連摂食障害の症例報告は多数ある
■ゾルピデムと睡眠関連摂食障害の疫学的関連は不明である
■ゾルピデムによる睡眠時異常行動のリスクファクターはゾルピデム高用量、女性、若年と報告されている。

[イントロダクション]
ゾルピデムの有害事象リスクについては以前にレビューしました。
〔地域医療の見え方2015.Mar.4;1(8)〕
http://jp.bloguru.com/syuichiao/233228/2015mar418

様々な有害事象との関連が仮説生成されていますが、その因果関係についてはいまいち明確なところは分からず、実際の現場でどのように活用すべきかは議論の余地があるところでしょう。

ゾルピデムに限らず、眠剤のリスクと言うのは服用する患者側もある程度理解していることが多いと思います。できれば、薬に頼りたくないわけですし、医療者からしたら、エビデンス云々の前に、やはりそのリスクは十分に知っているはずです。それにもかかわらず、長期投与されていることは少なくないでしょう。これを漫然投与ととらえるのか、漫然投与するよりほかないととらえるかで、この問題の捉え方は大きく変わるでしょう。

漫然投与とは近年ポリファーマシーが問題に取り上げられることが多い中で、何か、悪であるというような、少なくとも医療経済的にメリットはないというような切り口で語られることも多いと思います。しかし、既に多くの薬剤を服用している場合、服用薬剤を減らすという労力は決して少なくありません。それはただのさぼりだろ、と言われるかもしれませんが、限られた人的、時間的リソースの中で、効率的に医療を提供していた結果ともいえるわけです。

医療経済的なコストと引き換えに、人的、時間的コストをかける、つまり、ポリファーマシー是正の問題も大きくこのような2面性を有しているわけです。僕たちはその局面のどちらか一方しか見てこなかった、否、むしろ医療経済的なコストの面しか見てこなかったということはないでしょうか。

さて、前置きが長くなりました。ポリファーマシー含め、いわゆる漫然投与が医学的にあまり良くない影響がある、少なくとも良い、という事はなさそうです。ただそれが患者の幸福とどういう関係があるのか、良く考える必要があります。医薬品のリスクベネフィットという情報をすべての医療者、患者と共有したところに見えてくる、僕自身はその可能性に欠けています。

[睡眠関連摂食障害の症例報告]
ゾルピデムでは夜間睡眠中に無意識に摂食行動を繰り返す、睡眠関連摂食障害(sleep related eating disorder:SRED)という有害事象の症例報告が多数あります。(※1)(※2)本稿では睡眠時行動障害の一種ととらえておきます。
マイスリー®添付文書にも警告欄に「本剤の服用後に、もうろう状態、睡眠随伴症状(夢遊症状等)があらわれることがある。」と記載があります。またゾルピデム中止とともに症状が消失することが報告されており、なにがしかの関連を傍証します。(※3)

摂食障害以外にもゾルピデムと夜間の異常行動に関する報告は存在します。(※4)日本での報告では、ゾルピデム服用後壁を叩いたり,布団を外に出したり,1 日 5 回食事をしたことを本人が覚えていなかったというような症状が発生し、某日、病院から行方不明になってしまいました。翌日,ポンプ場の狭い貯水槽で,水没しているのを発見された、というなかなか衝撃的な報告です。(※5) 本症例患者には希死念慮などは見られず、ゾルピデムによる睡眠時遊行症の可能性が高いと結論しています。

睡眠関連摂食障害に関して、32~72歳の8例(男性6人、投与量は7名で10mg/日、1名で12.5mg/日)の症例を検討した文献(※6)によれば、症状は平均で39.8日後に現れたとしています。一晩に1~8エピソードの夜間摂食行動が記録されています。この報告ではゾルピデムを服用している患者の約1%に起こりうるのではないかと結論しています。

[ゾルピデムによる睡眠時異常行動]
2010年までに報告されたゾルピデムと精神神経系に関する有害事象報告は(※7)の文献にまとめられています。夜間摂食異常や夢遊病、幻視などが多いようです。詳細は以下のURLをご覧ください。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3067983/table/tbl1/

この報告では、これらの症例報告をレビューした結果、以下の4点に留意するよう述べています。

①血中濃度は男性よりも女性で40%有意に高い
②幻覚はゾルピデム5mg/日を超える投与量で起きており、用量依存性が認められる
③ゾルピデムはタンパク結合率が高く(は96.0~96.3%)、低栄養状態でアルブミンが低下している患者ではゾルピデムの血中濃度が上昇する可能性がある。
④CYP3A4における相互作用による血中濃度上昇の懸念

[リスク因子を探る]
睡眠時異常行動【complex sleep-related behaviors (CSBs)】に関する有害事象のリスク因子が検討されていました。(※8)

この研究は台湾において、精神科外来に通院していた125人の症例を対象に解析されたものです。125人(ゾルピデム使用は67人)のうち、19人(15.2%)で睡眠時異常行動が報告され、その全例にゾルピデムが使用されていました。

ゾルピデムを使用していた67人の解析において、睡眠時異常行動を発症した患者群でより年齢が若く、そして女性で多く、さらに高用量で用いられていた(10mg/日を超える)と報告されています。高用量でのオッズ比は13.1[95% 信頼区間2.6~65]と報告されており、かなり強いリスク因子である可能性があります。

[ゾルピデムと睡眠時行動障害をどうとらえる]
今回の文献検索では疫学的関連を検討した報告は見つけられませんでした。ただ症例報告は多数あり、そのリスク因子の検討はなされていました。現段階ではその因果関係は不明であるものの、リスクファクターを熟慮し注意喚起を行うべきでしょう。比較的若い女性への高用量投与は十分警戒すべきだと思われます。もちろんそれ以外の症例で注意が不要と言うわけではありませんが、ゾルピデムで幸せに暮らしている人もいて、そういう人たちにどのような介入を実際にすべきなのか、現段階ではよく分かりません。リスクの詳細の考察のためにも、今後の疫学的検討に注目したいと思います。

[参考文献]
(※1)Dang A.et.al. Zolpidem induced Nocturnal Sleep-Related Eating Disorder (NSRED) in a male patient. Int J Eat Disord. 2009 May;42(4):385-6. PMID: 19107832
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19107832
(※2) Najjar M.et,al. Zolpidem and amnestic sleep related eating disorder. J Clin Sleep Med. 2007 Oct 15;3(6):637-8. PMID: 17993047
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17993047
(※3) Kim HK.et.al. Zolpidem-induced compulsive evening eating behavior. Clin Neuropharmacol. 2013 Sep-Oct;36(5):173-4.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24045611
(※4) Singh H.et.al. Sleep-walking a rarest side effect of zolpidem. Indian J Psychol Med. 2015 Jan-Mar;37(1):105-6. PMID: 25722525
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25722525
(※5) Usumoto Y.et.al. [An Autopsy Case of Abnormal Behaviour Induced by Zolpidem]. Fukuoka Igaku Zasshi. 2015 Jun;106(6):202-5. PMID: 26306385
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26306385
http://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/handle/2324/1518483/p202.pdf
(※6) Valiensi SM.et.al. [Sleep related eating disorders as a side effect of zolpidem]. Medicina (B Aires). 2010;70(3):223-6. PMID: 20529770
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20529770
(※7)Inagaki T.et.al. Adverse reactions to zolpidem: case reports and a review of the literature. Prim Care Companion J Clin Psychiatry. 2010;12(6). pii: PCC.09r00849. PMID: 21494350
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21494350
(※8) Hwang TJ.et.al. Risk predictors for hypnosedative-related complex sleep behaviors: a retrospective, cross-sectional pilot study. J Clin Psychiatry. 2010 Oct;71(10):1331-5. PMID: 20441722
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20441722

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2. CLINICAL EVIDENCE SYNOPSES
-注目論文の紹介です-

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■2型糖尿病患者の予後■
Tancredi M.et.al. Excess Mortality among Persons with Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2015 Oct 29;373(18):1720-32. PMID: 26510021
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26510021
背景と研究デザイン:2 型糖尿病患者における血糖コントロールと腎合併症とによるリスク評価
に関するコホート研究

P:スウェーデンのSwedish National Diabetes Registerより、データを抽出(2型糖尿病患者1例につき、対症5例を、年齢,性別、居住地域でマッチング)
E:2型糖尿病患者(追跡期間平均4.6年)
C:一般住民(追跡期間平均4.8年)
O:死亡、心血管死亡等

追跡期間中、2型糖尿病患者 77,117 人/435,369 人(17.7%)が、一般住民では306,097 人/ 2,117,483人(14.5%)が死亡。
・調整ハザード比 1.15[95%信頼区間1.14~1.16]
心血管死亡は2型糖尿病患者群 7.9%、一般住民 6.1%
・調整ハザード比 1.14[95%信頼区間1.13~1.15]
しかしながら、年齢や血糖コントロール、腎合併症別にみると死亡リスクは低くなり多用という結論。

■インクレチン関連薬とすい臓がん■
Knapen LM.et.al. Use of Incretin Agents and Risk of Pancreatic Cancer: A Population-Based Cohort Study. Diabetes Obes Metab. 2015 Nov 5. [Epub ahead of print] PMID: 26537555
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26537555
背景と研究デザイン:インクレチン関連薬とすい臓がんリスクを検討した後ろ向きコホート研究

P:Clinical Practice Research Datalink (CPRD)より
E;少なくとも1種類の非インスリン糖尿病治療薬を使用していた182,428人
C:E群1名につき1名を年齢でマッチした糖尿病でない患者
O:すい臓がん発症

平均4.1年の追跡で少なくとも1種類以上の糖尿病治療薬を使用していた患者群は糖尿病のない患者群に比べてすい臓がんリスクに関連
ハザード比4.28[95%信頼区間3.49-5.24]
このうちインクレチン関連薬使用では2倍のリスク上昇に関連した。

しかし、インクレチン関連薬と他の糖尿病治療薬との比較では明確な差がでず。
ハザード比1.36[95%信頼区間0.94〜1.96]

■マクロライドと先天性奇形リスク■
Bérard A.et.al. Use of macrolides during pregnancy and the risk of birth defects: a population-based study. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2015 Oct 29. [Epub ahead of print] PMID: 26513406
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26513406
背景と研究デザイン:マクロライドの使用と先天性奇形リスクを検討したコホート研究

P: Quebec Pregnancy Cohortより、135 859人の妊娠エピソード
E:第1トリメスター期にマクロライドへの曝露
(アジスロマイシン使用914、エリスロシン使用734, クラリスロマイシン686)
C:第1トリメスター期にペニシリンへの曝露9106
O:生後1年以内の先天性奇形

交絡調整後のリスク比は以下の通り
azithromycin (RR = 1.19, 95%CI: 0.98, 1.44; 120 exposed cases)
erythromycin (RR = 0.96, 95%CI: 0.74, 1.24; 66 exposed cases)
clarithromycin (RR = 1.12, 95%CI: 0.99, 1.42; 79 exposed cases)

■セルトラリンと先天性奇形リスク■
Bérard A.et.al. Sertraline use during pregnancy and the risk of major malformations. Am J Obstet Gynecol. 2015 Jun;212(6):795.e1-795.e12. PMID: 25637841
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25637841
背景と研究デザイン:セルトラリンの使用と先天性奇形リスクを検討したコホート研究

P;カナダケベック州のコホートより18,493のうつ、不安を有する妊娠女性
E:セルトラリン使用366、セルトラリン以外のSSRI使用1963、SSRI以外の抗うつ薬使用1296
C;薬剤使用なし
O:生後1年以内の先天性奇形

セルトラリンの使用で先天性奇形リスクの明確な上昇を認めず。
しかし、心房/心室欠陥リスク上昇
・リスク比1.34[95%信頼区間1.02-1.76]
頭蓋骨癒合症
・リスク比2.03[95%信頼区間1.09-3.75]

■夏の脳卒中リスク■
Shigematsu K.et.al. Higher ratio of ischemic stroke to hemorrhagic stroke in summer. Acta Neurol Scand. 2015 Dec;132(6):423-9PMID: 25855396
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25855396
背景と研究デザイン:脳卒中と季節の関連を検討したコホート研究

P:Kyoto Stroke Registryより、13,788人
E:春季、冬季、秋季
C:夏季
O:脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血の発症

脳梗塞は夏に比べて秋で少ない
・オッズ比0.93[95%信頼区間0.87-0.98]
脳出血は夏に比べて春、秋、冬で高い
・春:オッズ比1.36[95%信頼区間1.23〜1.49]
・秋:オッズ比 1.16[95%信頼区間1.05〜1.28]
・冬:オッズ比1.37[95%信頼区間1.25-1.51]
脳卒中も同様
・春:オッズ比1.28 [95%信頼区間1.13-1.45]
・秋:オッズ比1.26 [95%信頼区間1.11-1.43,]
・冬:オッズ比1.35 [95%信頼区間1.19-1.53]

■非糖尿病高齢者のHbA1c■
Grossman A.et.al. The association between glycated hemoglobin levels and mortality in non-diabetic elderly subjects. Eur J Intern Med. 2015 Oct 28. pii: S0953-6205(15)00339-8. PMID: 26520045
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26520045
背景と研究デザイン:非糖尿病の高齢者におけるHbA1cと死亡のリスク

P:65歳以上でHbA1cが6.5未満の非糖尿病患者12,937人
E:最高5分位HbA1c>6.11%、最低5分位HbA1c<5.39%
C:HbA1c 5.9-6.1%
O:総死亡

HbA1c 5.9-6.1%と比較して
・HbA1c>6.11%:ハザード比1.21[95%信頼区間1.09-1.35]
・HbA1c<5.39%:ハザード比1.17[95%信頼区間1.04-1.32]

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3. CASE REPORT
-気になる症例報告をピックアップします-

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■酸化マグネシウム製剤と高マグネシウム血症■
中司 敦子 他 高マグネシウム血症により意識障害をきたした慢性腎不全の2例 日本透析医学会雑誌 Vol. 37 (2004) No. 2 P 163-168
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt1994/37/2/37_2_163/_article/-char/ja/
緩下剤の連用中に高マグネシウム (Mg) 血症による意識障害をきたした慢性腎不全の2症例
①77歳, 男性、糖尿病性腎症による慢性腎不全で加療中。血清Mg 7.3mg/dL。皮膚の潮紅, 肺炎および呼吸抑制による呼吸不全あり。血液透析にて軽快
②78歳, 女性。慢性関節リウマチ,、腎機能低下で加療中に尿路感染症により腎機能が増悪し、 全身倦怠感及び見当識障害が出現し入院。血清Mg 7.1mg/dL。 血液透析を3日間連続して行い軽快

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4. EDITORIAL NOTE
-編集後記-

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酸化マグネシウムと高マグネシウム血症。やはり症例報告は複数あります。特に腎機能が低下している患者については十分注意が必要であり、文献上もそのような結果になっているようです。

齊藤 昇 高齢入院患者の血清マグネシウム値への腎機能障害と酸化マグネシウム投与の影響 日本老年医学会雑誌 Vol. 48 (2011) No. 3 P 263-270
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/48/3/48_3_263/_article/-char/ja/
入院患者についてMgO服用で血清Mgは増加し、またeGFRの低下は血清Mgを増加させた。特にeGFRが30 ml /min/1.73 m2未満(第1群)では血清Mgは高かったと結論されています。

このテーマにおきまして参考になるブログ記事は以下の通りです。

pharmacist's record
酸化マグネシウム(MgO)と血清マグネシウム値
http://ph-minimal.hatenablog.com/entry/2015/11/10/004519
#学校 #教育 #受験 #外国語 #科学

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