なんとか立ち上がれた コルセットをぎゅぎゅと 今日は歩ける 行こうあそこへ 靴下が履けない なら、いらない 靴が履けない なら、サンダルで行こう よしもう少しだ 段差に気をつけて おお、ついた しかも50円引きだ ソフトクリーム バニラ、コーンで 帰りはこいつがあれば楽勝
何とか連休に滑り込んだが 案の定、腰が立たず寝たきり しかし不思議なものだ 足の痺れがずいぶんと軽くなっている もしかすると この腰の痛みが抜けてしまえば かなりいい感じになるだろう 疲れさえ抜ければたぶん 寝たきりならやはり詩を書こう しかし、これまた頸椎症と五十肩 詩を綴るデバイスが両手で持てない 肘で押さえて右指で打ち込む まあ慣れたもんだ まあ、ホーキング博士から見たら あなたはまだまだ恵まれた環境だ と、言われる気はするが キュ、キュ、キュ、キュ、キュ 平和な鳥の鳴き声がする そよそよと風が抜けてゆく ドスン、ドスン たまにトラックが通るけど 私が歩けなくても 世界はどんどん動いている 幸せは場所を選ばない こんな詩を綴りながら連休を過ごす 与えられた環境で楽しむように 私は今日も前向きだ
哲ちゃんはね 哲生っていうんだ ほんとはね 自分の開拓に明け暮れ 詩なんて書いて そんなもんが何になる そう言われることもあるけど 哲ちゃんはね 理由なんて関係ないのさ 僕という作品を 作りたいだけなのさ 哲ちゃんはね 哲生っていうんだ ほんとはね
決めちまえばいい 余計なことは考えるな 病室のベットで苦しい筈なのに 最後まで痛いの一言も言わなかった 戦中、戦後を生き抜いた父の口癖が 今、少し弱った俺にふと刺さってきた 決めていたんだ 父は耐え抜くと決めていたんだ 俺も決めてしまおう 俺は元気になる
二十代 やはり詩を書いていた 友人は俺のことを「天才」と言った そうか 俺の詩は知的財産だ しかし三十代 俺のこと「天才」と言ってくれたよな えっ お前はすげえ「天然」だなあ と言った記憶はあるけど それから 「天然」も褒め言葉と思い込み 詩を書き続けているのであった
ツツジの甘い香りだと思ったら 素敵な誘惑は君の蒼い髪から流れて 恋も焦がしていないのに I love you. と、言わせてしまうのだから 君は慣れているように 僕を手のひらで転がして No way ! と、驚いたお芝居 なによりも君だった瞬間 僕がクレイジーだったわけではない
知り合いの知り合いに シックセンスを持っている方がいて まあ、他人だけど 予知能力で私の病気について 訊いてもらった 頸の後遺症はこのまま残りますが 今、患っている腰は良くなります、と 頸は現状維持で、腰は良くなるのか そんな嬉しいことない そうそう前向きに お言葉を頂戴しておこう 昨日のルートブロックも そこそこ効いているし 食欲がないわけでもないし 眠れているし 仕事では歯を食いしばり なんとかだけど なんとかなっている 今日は通販で腰に負担を掛けない 椅子に敷くマットを買った そう前向きに、前向きに 家に帰ったらコルセットを外し ストレッチ、ストレッチ 湯船に使って血の巡りを良くして 前向きに、前向きに さあさあ、痛いの痛いの飛んでけ さあさあ、痺れる痺れる飛んでけ なんとかだけど なんとかなるに違いない きっと私の未来はスキッと爽やか 弾む身体になってしまうのさ
おおきな絵本に小さな手 生まれたてのような瞳 窓の隙間からはそよそよと 風が通り少しのびた髪の毛が さらりと揺れている ページがめくられ お花畑を新しい友だちと 散歩に出かけている 目の前には小さな主人公 となりへ座われば 沈むソファで微笑みを見せ またすぐに物語へ
夢を追う時 君はやさしく応援する 現実に追われる時 君は僕の声が聞こえない お互いに疲れている 一生に何度という話ではないが 会話の先は見えている 何も言わずに歯を食いしばって 行くところまで行ったのなら 僕の納得があるのかもしれない 前向きに前向きに 突っ込んで倒れていければ それでいいじゃないか ナルヨウニシカナラナイ ヨワネヲハクヨリ ソコヘイッテオモイッキリ クダケチレバモウソレデイイ
初めて足が動かなくなった それなのにうつむき笑っていた どうしたのですか? ああ、ちょっと足が 大丈夫ですか、といわれ 私が笑っているのだから たいしたことでないと 思ってくれただろう 五分ほどして足を引きずり その場から離れた 近い将来、歩けなくなる日が 来るような気がしている MRI検査での結果が明日にはわかる 脊椎を三度も手術しているのだから この身体の変化には予想がつく しかし、出来ることはしてきたし 自分だけなんてとは思ったりしない やまぬ痛みが教えてくれた 逃げるところはない 戦うところもなく 笑えるときに笑おう、と 初めて足が動かなくなった それなのにどうにかなる、と 私は笑える人間になれていた
おいおい 地図の見方もわからねえのか あんた、地獄へ来るような面じゃねえ ここは地獄の入り口だ さあさあ、その地図を反対にして 天国へ行ってくださいな おいおい だからこっちは地獄だぞ 大丈夫か ああ、仕方ねえ 俺が天国まで案内してやるよ あんた、いい仏さんみたいだからな
繰り返してしまう悪循環を受け入れながら、どうやって微笑んでいこうか。ひとそれぞれの葛藤や悩み、苦しい、痛みがあり、それは自分だけのものではないが、やはり当人にとって最大級の生きていくための試練であり、どうにかユーモアへ変換したいものだ。言うのは簡単だが、超越に近い次元と思えばほど遠く感じ、どちらかと言えば諦めや楽観といった言葉がスタートラインになるのだろう。まずは今、出来ることをすれば、その先にもっと落胆が襲いかかることになっても、悔いはいずれ消えてしまうはず。やはり、自分だけの生きる知恵をつけようとしながら今、出来ることをする。それが微笑みをもたらすことに繋がっているような気がしている。
雨が降っています 身体にはきつく響きますが 心にはとっても やさしく響いてきます このまま、このまま ずっとこのまま 眺めていたいのです そんな気持ちの中にいても 進む準備をしています 電車が視界をさえぎり 目の前には能面をつけたひと 僕もそのひとりとなり 揺られているのでしょう 曇りガラスを手で拭い 広がっています濡れた街並み 今日も始まっています 雨に包まれながら やさしい気持ちになりながら 進んでいきます
キラリン ひらめいて 僕は発明をしよう、と 戦争がなく 差別もない平和な世界を 創りだす機械 いろいろなパーツを使い 組み立てています 絵や音楽に小説、詩 演劇にミュージカル スポーツなどなど 完成はしていません とても難しいからです でも、あきらめません
みんなの魂は青だった 今まで知らないで 僕は自分の色も知らず ひとに寄り添えば 消えてしまう赤だった 澄んだ青は赤を嫌った 負の奇跡は運命か それでも生きたかった 僕は燃えて燃えた やっと青に消えぬ赤に 無邪気を装いつつ 僕は燃えに燃えて今が 無邪気を装いつつ 歯を食いしばり燃えた
詩が空を飛び、雲をかき分け 心地よさを知り 何処までも行ける気がして しかし、詩は詩を傷つけ始め 言葉の羽根に疑問符ばかり付着させ 落ちてしまえば重たく空を見つめるだけ 自由を奪われた詩は 悲しみの涙に流されてしまう 飛ぶことも、立っていることも 許されずに孤独の溝を それでも綴らずにはいられない 苦の羽根になろうとも 詩の魂は言葉を越えようとする そして、裏切るのさ 空白だらけの羽根になろうとも 終わらない命題の元で 詩は匍匐しながらも進んで行く
みんなの魂は青だった 今まで知らないで 僕は自分の色も知らず ひとに寄り添えば 消えてしまう赤だった 澄んだ青は赤を嫌った 負の奇跡は運命か それでも生きたかった 僕は燃えて燃えた やっと青に消えぬ赤に 無邪気を装いつつ 僕は燃えに燃えて今が 無邪気を装いつつ 歯を食いしばり燃えた
雨が降ってきそうな 怪しい雲がもくもくと迫ってきています だけれども動けそうにありません 広場の芝生で横になり 平日の疲れはどんどん身体から 根っことして抜け出し芝生になりたいのです 僕はこのまま 人間として何もなかったように芝生となり ゆったりと移り気な空を見ていたいのです そんな気持ちわかりますか 椅子に五分と座っていられず 立っているのも五分と耐えられず 歩き出せば何とか耐えられる痛み 僕は今週も頑張りました 雲から零れる雨より先に涙が零れてきます どうしようもなく自分が可哀想で だから僕はこのまま 人間として何もなかったように芝生となり ゆったりと移り気な空を見ていたいのです そんな気持ちわかりますか
詩を書くことは 詩を書くことでない 自分をどれだけ 滲み出すか に、かかっている 自分と自分が闘って どれだけ自分を完成できるか に、かかっている 詩を晒した時 もうひとつの闘いがある 敗れて粉々になる言葉 に、笑えばいい 詩を書くことは 詩を書くことでない
どうしても 行かなくてはいけない 場所があった 風が吹き終わる場所 三丁目にある真っ暗な喫茶店 ドアが開く音でオーナーが いらっしゃいませ、と 低い声を響かせる ドアが閉まると テーブルも椅子も 見えなくなってしまい 手探りで席につこうとする オーナーの姿は 未だ見たことがない コーヒーのいい香りはするが テーブルに置かれたカップを いつも指を引っ掛けて こぼしそうになる しかし美味い 実に美味いコーヒーである 香り深み温度と 陶器の口触りから流れ 魅惑へ誘(いざな)ってくれる 見えない店内の 見えないコーヒーを飲む 情報は限りなく少なく 時間とコーヒー 今日もここへ来てしまう
なかなか詩に関わる活動が重なって、詩が書けていない。これは詩まみれな日々なのだから充実しているといえよう。さあ、ぼちぼちこの詩を書きたい気持ちを爆発させよう。とは言っても、生活のための仕事も待っている。時間が足りないほど生きている感がます。詩は元気のもと、やったるぜ、と朝から盛り上がってしまいました。失礼。
中学一年生の時 僕は初体験をした と、言っても 初めて女子に殴られた って、話だ 授業中 ちょっとしたことで 口論になって いきなり教科書が 頭に落ちてきた でもなんだろう まったく痛くない 怒りもない 僕に苦笑いをさせる 初めての女子を知った
明日はわかっている たぶん生きていて 何時ものように 風が冷たいとか 身体が痛むとか たいして頑張って いないのに 俺はどれだけ 頑張っているんだ なんて思うのだろう 明日はわかっている たぶん生きていて 何時ものように さほど変わらない 自分で流れて そんなところで 安心しながら へらへら笑い 平凡を味わって たぶん生きている
僕は何色にも染まることができる ただほかの色に混ざると身体も心も 変わってしまいもとには戻らない 友だちはつぎつぎにほかの色に染まり おとなになってゆくのさ ひとりの僕はあせっている だけどこのままでいたい なぜなら僕はこの色が好きだから
- 命日 - 林の中では すでに線香が焚かれ 花に囲まれた彼は 照れ笑いをしていた お互いに 「献杯」とビールを飲む 私は 「俺はまだ死んでないよ」と 彼のひょうきんな性格は あの世にいってもかわらない 生前に静かなところで 眠りたいと言っていた彼は 林の中で暮らしている
どっこいしょ ほんだなから ほんがぬけない うんとこしょ どっこいしょ みなさん ちからをかして じいさん はなをさかす ばあいじゃないよ ちからをかして ねずみさん りょうりはあとで ぐりぐらね ちからをかして うんとこしょ どっこいしょ うんとこしょ どっこいしょ おおきなほんが ぬけました
切り裂いた 痛たむ身体で 心地よい風に 疑い進む 不安な足どり 剥がれない衣 軋み丸まり 固まる心 義理の山は 高くなるばかり 世間は大きく 己は小さく 課せられ遂げた 桜吹雪の有終 降るために 昇れと囁く