感じたい もっともっと青い空を 重たくなったこころ 持ち上げて散らして欲しい 何処にいるのかさえ分からないくらい 青く 青く 青く 初めて空になりたいと思った 知らぬことばかりのまま いつまでも吹き続ける青のように
≡9≡ 水蒸気をバケツで集め、休む暇もない 虹の作業員は近頃忙しい 雲の上ですってんころりん 笑って楽しい雨を降らせている たまに威張って指示する班長に叱られながらも あっち行って、そっち行って、水蒸気を追いかける 「班長様、あなたも水蒸気集めを手伝ってください」 「バカを言うな、俺は班長だぞ!」 「そうでした。あなたは班長様、失礼しました。 でも、汗をかくって気持ちいいですよ」 「……汗をかくのは気持ちいいか、俺様も水蒸気を集めるぞ!」 「今日は班長様、どうなされたのですか?」 「俺様は最近、からだが動くようになったんだよ!」 「でも、無理をなさらないほうが……」 「お前は虹の作業員だろ。しゃべる暇があったら水蒸気を集めろ!」 「はい」 班長の大きな声に作業員はすってんころりん 雲の上に仰向けになると厚い雲に覆われた 作業員は班長から叱られるとドキドキしてしまうので すぐに立ち上がり、また水蒸気を集めはじめた 「汗をかくのは気持ちいいな!」 「そうですね、班長様」 続く。。。
≡ 8 ≡ 旅から帰って一年が経つ 作業員はバケツをもって走り回っている そして昨日、百二十色の虹をつくることができた しかもその虹は三重 大きな虹の中にまた虹があって その虹の中に小さな虹 見たことのない虹に誰もが喜んでいた 作業員も大満足 そんな作業員のもとに本社の人間が再び現れた 「君は未来を変える才能をもった作業員だね。 もう、ここへは来ないつもりだったが……。 下界では今、君のつくった虹で大フィーバーしている。 また、記者会見に応じてもらう」 「もちろんです」 「それと君にとってはうれしいニュースがある。 班長は我が社に復職することが決定した。 記者会見を終えて作業場へ戻って来たときには、班長もいることだろう。 さあ、下界ではみんなが君のことを待っているから、すぐに出発だ」 「はい」 続く。。。