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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(49)『デンデラ』佐藤友哉(新潮文庫)

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今年の読書(49)『デンデラ』...
なんとも異色な小説と出会いました。
主人公の<斉藤カユ>は「村」の掟通り70歳を迎え、口減らしのために極楽浄土を願いながら『お参り場』に捨てられます。

ふと目を覚まし極楽浄土かと思った所は、『お参り場』に捨てられた老婆たちが密かに作り上げた『デンデラ』という共同体でした。
三十年前に捨てられた100歳の<三ツ屋メイ>を長として、50人ばかりの老婆たちが、恨みのある「村」をつぶそうとする襲撃派と、穏やかに死んでいきたい穏健派が対立していますが、<カユ>はどちらにも属しません。

そんな折、餌もなく冬眠できなかった背中に赤い毛がある「赤背」という子連れの雌熊が、餌を求めて『デンデラ』を襲います。
また、昔流行った疫病が再発し、次々に老婆達が亡くなっていきます。
50人の老婆達が「赤背」になぶり殺され、疫病で亡くなり、最後は6人だけが生き残り、<カユ>はある秘策を心に「赤背」との戦いに挑んでいきます。

姥捨て山といえば深沢七郎の『楢山節考』を思い出しますが、雌熊「赤背」との死闘を軸に、「村」に対する恨みだけで生き延びている老婆たちの生の悲しみが、胸に突き刺さる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(48)『サイレント・ヴォイス』佐藤青南(宝島社文庫)

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今年の読書(48)『サイレント...
異質な刑事が活躍する小説として、天才数学者<御子柴>が数学的な統計学でもって捜査を進める 『確率捜査官御子柴岳人』 、仮説・実験・証明をもとに論理的思考で計画された完全犯罪を覆す 『実験刑事トトリ』 と読み進め、今回は、「行動心理捜査官」の肩書きを持つ<楯岡絵麻>が主人公です。

全5話から構成されていますが、舞台は三畳程度の取調室で、記録係の後輩刑事<西野>と二人だけで、事件の真相に迫っていきます。
通称28歳の美人捜査官<楯岡絵麻>は、通称「エンマ様」と呼ばれ、行動心理学を用いて被疑者を自白へと導きます。

「ノンバール理論」・「なだめ行動」・「ミラーリング」・「コールドリーディング」等、人間の心理や行動を分析しながら被疑者の嘘を見抜く手順は、面白く読めました。

<楯岡絵麻>は、15年前に高校の恩師が殺害された過去があり、その責任感から刑事になった経緯があります。
最終章で時効が成立する寸前、ひとりで専任捜査を行っている刑事<山下>から新たな情報が届き、次作に続きそうな感じで終わりました。

人間の行動心理の勉強にもなり、恩師の事件も気になり、続巻が出ることを期待したい一冊です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(47)『実験刑事トトリ』西田征史 / 吉田恵里香(泰文堂)

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今年の読書(47)『実験刑事ト...
昨年11月3日(土)からNHK総合で全5回「土曜ドラマスペシャル」として放送された西田征史脚本の番組を吉田恵里香さんがノベライズされ、ドラマを観られた方もおられるかもしれません。

主人公は動物学者から、警視庁に中途採用された43歳の新米刑事<都鳥博士(ととりひろし)>で、教育係としての年下の<安永哲平>と組んで殺人事件を解決して行きます。

前回に読みました神永学の 『確率捜査官御子柴岳人』 では天才数学者の<御子柴>が数学的な統計学を用いて事件の深層に迫りましたが、こちらは現場の状況を再現するために仮説を立て<都鳥>自身が実験を行い、論理的思考で事件の真相を突き止めて行きます。

一見ひょうひょうとした<都鳥>の行動ですが、熱血漢あふれどこか憎めない<安永>との会話も楽しく、なるほどこれはテレビドラマだったら面白いだろうなと感じながら読み終えました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(46)『確率捜査官御子柴岳人』神永学(角川書店)

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今年の読書(46)『確率捜査官...
世田町署に、「捜査一課特殊取調対策班」とい部所が新設され、経験や勘だけの捜査ではなく、理論的な数式を持って犯罪捜査にあたることになります。

大学の数学の准教授<御子柴岳人>を中心として、父親が警察官であり更生させようとした相手に殺害されてしまう過去を持つ<新妻友紀>、班長の<権野道徳>、そして<友紀>の部下だった<津山重臣>が主だった登場人物です。

全6章からなり、痴漢容疑で逮捕された<島田>を巡る一連の事件が、各章として結末を付けながら全体の物語りとして構成されています。
「ベイズ推理」・「事例ベース意思決定理論」・「利得行列」など、確立や統計学の応用を用いながら、事件の真相にたどり着きます。

著者には悪いのですが、読みながらアメリカのテレビドラマ『NUMBERS天才数学者の事件ファイル』の二番煎じに感じました。
FBI特別捜査官<ドン・エプス>は、数学の天才で犯罪者の行動を予測する公式を導き出す弟の<チャールズ・エプス>と協力して、犯人を捕らえていきます。

日本的な警察のイメージの中での物語ですので、『NUMBERS』に比べて数式や理論的な要素は弱く、まだまだ人情話的な構成になるのは仕方ないのかもしれません。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(45)『猛き海狼』チャールズ・マケイン(新潮文庫)

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今年の読書(45)『猛き海狼』...
第二次世界大戦を舞台に、ドイツ海軍の中尉<マクシミリアン・ブレーケンドリフ>(マックス)を主人公に据え、装甲艦グラフ・シュペー号の副官として南太平洋の哨戒に出るところから物語は始まります。

<ランドルフ艦長>のもと、敵国イギリスの軍艦を打ち破る戦果を重ねますが、やがて大きな痛手を受け、中立国での修理も拒否され、グラフ・シュペー号は敵国に渡るのを阻止するために艦長もろとも自爆して海に沈んでしまいます。

その後商船に偽装したメテオール号に乗り組み、イギリス艦とインド洋で対戦中に艦は撃沈、救命ボートで漂流の末生き延び、父親や恋人のいる故国に戻りますが、愛国心に燃える<マックス>は大尉となり潜水艦U-114の艦長として、再びアメリカ本国へと向かっていきます。

大戦中のドイツの状況、艦隊同士の対戦状況や潜水艦内部の描写、(マックス)と恋人との関係を組み込みながら、祖国を思い入れる心の動き等、史実に裏付けされた出来事や登場人物を織り込み、読み応えのある上下二冊になっています。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(44)『さくら草』永井するみ(創元推理文庫)

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今年の読書(44)『さくら草』...
桜の季節になり、なにげなくタイトルの『さくら草』に魅かれ手に取りましたら、女性刑事役として少年課の<白石理恵>が登場する警察小説ということで読んでみました。

14歳の少女がラブホテルの駐車場で殺害され、ローティーンの人気高級ブランド「プリムローズ」を身に着けていたのを気に掛けた<白石>が、ベテラン刑事の<俵坂>とペアを組み、殺人事件の捜査に当たることになります。
捜査を進める過程で、またもや「プリムローズ」ファンの12歳の少女の連続殺人事件が発生してしまいます。

クリーニング店主の身内で起こった悲しい事件と、アパレルとしての「プリムローズ」のやり手女性プロヂューサー<日比野晶子>の動きが複雑に絡み合い、最後まで読者を飽きさせません。

<白石>刑事を主人公とする続きを読みたいと感じさせる内容でしたが、残念ながら著者は2010年9月に亡くなられていますので、シリーズ化はかなわぬ夢となりました。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(43)『大人の恋力』紫門ふみ(新潮文庫)

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今年の読書(43)『大人の恋力...
漫画家弘兼憲史氏の妻であり、自らも漫画家である著者が、大人の恋話を描いた28話が綴られています。

歌手のユーミンと同様に、「恋愛の巨匠」や「恋愛の教祖」とも呼ばれている著者ですが、人生相談的に身の周りに集まる元気な40~50歳の女や男の現実的な恋愛話が詰まっています。

読みながら感じたことは、恋愛に正解はなく著者が述べているように、<不倫だ四つ股愛だと聞いて、その人たちを<悪>だと決めつけることはできない。男と女には、当事者しか分からない、理屈では説明できない世界が存在するものである>に要約されるようです。

また大人が恋するための必要条件として<自分の恋を笑い話にできる余裕>だとまとめられていました。
そんな笑い話が、28話楽しめる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(42)『茶子と三人の男子たち』令丈ヒロ子(新潮文庫)

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今年の読書(42)『茶子と三人...
副題に「S力(エスりき)人情商店街1」とありますが、シリーズ4巻で完結するようです。

さびれつつある「塩力商店街」で育った幼馴染の中学生たちを中心として、話しが進んでいきます。
和風喫茶「茶香瑠」の娘<馬場園茶子>、川嶋靴下店の<川嶋吾朗>、徳井写真館の<徳井研>、フラワー藤門の<藤門吉野>達が商店街のお祭りの日に、氏神様である塩力神社境内で雷に打たれ、その後様々な現象を体験するようになります。

いわゆる超能力が、4人のそれぞれの商売に関して身につくのですが、これは塩力商店街を活気づけるためだけに現われる現象で、<茶子>は塩力神様に気にいられて第七代目の「おリキ様」として認められます。

「S力商店街防衛隊=SSB」として、またそれぞれの商店の後継者として無事に塩力商店街を活性化させることができるのか、次作に続くようです。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(41)『愛は苦手』山本幸久(新潮文庫)

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今年の読書(41)『愛は苦手』...
タイトルだけを見ますと、なんとなく恋愛物の小説かとおもえますが、まったく違う軽快な9話からなる短篇集です。
それぞれの短篇に主人公として登場してくる女性たちは、40歳を超えた「アラフォー」と呼ばれる世代です。

平凡な主婦、離婚した女性、中間管理職として頑張る会社員、40歳を超えてできちゃった婚の女性、政治家の愛人、家出した過去を持つ売れっ子の漫画家等、様々な過去を背負った女性たちが繰り広げる紆余曲折の人生物語が詰まっています。

最近では作家名だけで男か女か分からなく、読みながら見事な女心の目線を感じ、「まさか女性作家?」と考えました。
奇しくも解説者の大島真寿美氏も、「山本幸久って本当に男なの!?」の一行から解説文を始められていましたので、妙に安心しました。

「愛」という言葉は男女間だけではなく、家族や近隣の人たち、仕事の同僚等、幅広い範囲に存在していることを、改めて感じさせてくれた一冊です。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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今年の読書(40)『逍遥の季節』乙川優三郎(新潮文庫)

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今年の読書(40)『逍遥の季節...
書物を読んで感動するのは、まずミステリーファンとしては緻密な構成と登場人物の個性に負うところが大きいとおもいます。
また博識な知識が、宝石のようにあちらこちらに光る文体も、これまた感動を覚えますが、この一冊は正に後者の一冊でした。

江戸の片隅に、恵まれない育ちを背負いながら、それぞれが自立するために手に職を持つ女たちを主人公にした、七篇からなる短篇集です。

『竹夫人』は三味線の師匠として生きる<澄(すみ)>、『三冬三春』は絵師として生きる<阿仁>、『夏雨草』は根付け作りに情熱を傾ける<ふさ>、『秋草風』は糸の染色に生きる<萌>、『細小群竹』は髪結いの見習いの<すず>、『逍遥の季節』では踊りの<藤枝>と生け花の<紗代乃>の葛藤等、その世界で生きる女たちの心の憧憬を見事に描き切っています。

パソコンも携帯電話もない時代に生きる、「男と女」・「親と子」・「師匠と弟子」の人情味あふれる生き様が、爽やかさを残してくれる一冊でした。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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