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神戸:ファルコンの散歩メモ

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今年の読書(79)『シーソーモンスター』伊坂幸太郎(中公文庫)

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今年の読書(79)『シーソーモ...
本書『シーソーモンスター』は、2019年4月に単行本として刊行され、2022年10月25日に文庫本が発売されています。

表題作以外に『スピンモンスター』の中編2篇が収められ、〈螺旋プロジェクト〉として「共通ルールを決めて原始から未来までの歴史物語を書く」というもので、<伊坂幸太郎>の呼びかけに8人の作家<朝井リョウ・天野純希・伊坂幸太郎・乾ルカ・大森兄弟・澤田瞳子・薬丸岳・吉田篤弘>が参画しています。

物語の〈ルール〉は3つあり、①「海族」VS[山族」の対立を描く、②共通のキャラクターを登場させる、③共通シーンや象徴モチーフを出すというものです。10月に2冊、11月二さつ、12月に2冊のペースで文庫本発売されますが、単独でも楽しめるということで呼びかけ人の<伊坂幸太郎>を読んでみました。

表題作『シーソーモンスター』は、一見家庭内の嫁「北山宮子」と姑「セツ」のいざこざ問題に見せながら元情報員の妻とこちらも元諜報員の姑の争いをコミカルに描いています。

『スピンモンスター』は近未来の日本を舞台に描かれ、SNSやメールでの連絡ではなく手書きの手紙のフリーの配達人「水戸直正」に託された謎の手紙を元に、情報管理社会を揶揄して描いています。警察組織の情報管理社会を描いた<誉田哲也>の『背中の蜘蛛』を読んだ後だけに、現実感を感じながら(480ページ)読み終えました。
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今年の読書(78)『ゆえに警官は見護る』日明恩(双葉文庫)

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今年の読書(78)『ゆえに警官...
<日明恩>の文庫本としての前作『やがて警官は微睡る〈新装版〉』が、日本版『ダイハード』的で面白く読めましたので、2022年10月16日発売のシリーズ4作目の本書『ゆえに警官は見護る』に続きました。

『やがて警官は微睡る〈新装版〉』では、場面展開も早く、落ち着きどころを先読みしながらテンポよく読めましたが、本書はじっくりと刑事の仕事を読み解く(571ページ)の長編でした。

明け方の港区芝浦のマンション前で焼死体が発見されます。5本のタイヤの中に立たせた人体を燃やすという残忍な手口でした。だが検視の結果、燃焼時には既に死亡していたことが判明します。一方、新宿署留置管理課の「武本」は、深夜の歌舞伎町での泥酔での喧嘩で暴行生涯で逮捕、勾留された「柏木」という男の静かな佇まいが、刑事として気になっていました。

そんな中、西新宿のビル前で同様の手口の殺人放火事件が発生。「武本」は、新宿署の捜査本部に応援にきた警視庁刑事総務課刑事企画第一係の「潮崎警視」と再会します。

シリーズとしては、タフガイ刑事「武本」とお坊ちゃま上司「潮崎」の活躍が主体となるのですが、本書では、本庁捜査一課の24歳の女性刑事「正木星里花」が、捜査員としてお荷物の〈治外法権〉の「潮崎警視」と〈屁理屈大臣〉の「宇佐見」の監視役として新宿署の合同捜査本部に出向させられ、「武本」と接触するという立場でのキャラクターとして描かれています。

特に「武本」が配置されている警察署の留置所内の描写が秀逸で、定年まじかの「豊本」もいい脇役で描かれていました。

前作のような派手なアクションシーンはありませんが、刑事ミステリーが好きな読者にとっては、じっくりと読み応えのある一冊だと思います。
#ブログ #文庫本 #読書

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今年の読書(77)『ファルコン&ウィンター・ソルジャー マーベルドラマシリーズ オフィシャルガイド』

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今年の読書(77)『ファルコン...
ディズニープラスで独占配信中の『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』は、マーベル・スタジオが贈るディズニープラスオリジナルドラマとして、アベンジャーズの人気キャラクター「ワンダ」(エリザベス・オルセン)と「ヴィジョン」(ポール・ベタニー)の奇妙な夫婦生活を描いた第1弾の『ワンダヴィジョン』に続く第2弾になります。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』のラストで「キャプテン・アメリカ」から盾を託された「ファルコン」が、「キャップ」の旧友「ウィンター・ソルジャー」と新たな戦いに巻き込まれていくさまが描かれた『ファルコン&ウィンター・ソルジャー マーベルドラマシリーズ オフィシャルガイド』(2750円・KADOKAWA)が、ウォルト・ディズニー・ジャパンの監修、<上杉 隼人>の 翻訳で発売されています。

本誌には、「ファルコン / サム・ウィルソン」役の<アンソニー・マッキー>、「ウィンター・ソルジャー / バッキー・バーンズ」役の<セバスチャン・スタン>、「ジョン・ウォーカー」役の<ワイアット・ラッセル>ら本作の主要キャストや、スタッフ陣が語った裏話が収録されています。

また、全6エピソードの詳細なあらすじが、製作時の貴重写真と共に紹介されています。
#テレビドラマ #ディズニープラス #ブログ #単行本 #読書

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今年の読書(76)『背中の蜘蛛』誉田哲也(双葉文庫)

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今年の読書(76)『背中の蜘蛛...
本書『背中の蜘蛛』は、2019年10月20日双葉社より刊行され、第162回・直木賞の候補作品になり、2022年10月16日、文庫本として発売されています。

<誉田哲也>の作品では、『ストロベリーナイト』をはじめとする〈姫川玲子〉シリーズが、<竹内結子>主演で連続ドラマ化、映画化『ストロベリーナイト』(2013年・監督:佐藤祐市 )もされています。また特殊犯捜査係(SIT)を舞台にした『ジウ』三部作((Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ))も<黒木メイサ>、<多部未華子>主演で連続ドラマ化されています。いずれも個性的な女性刑事が登場するのが特徴ですが、本書では、女性刑事は登場しません。

「第一部 裏切りの日」の主人公は警視庁池袋署の刑事課長「本宮夏生」です。西池袋で起きた男性の路上殺人事件の捜査に入ります。現在の犯罪捜査において、防犯カメラの画像解析が大きな役割を果たしています。「足を使っての捜査に警察は弱くなっている」と思う「本宮」ですが、本作でも警視庁の捜査支援分析センター(SSBC)による画像分析で、黒いスーツの男が浮上しますが、被害者が追われているのではなく、反対に被害者が黒いスーツの男を尾行しているようでした。
捜査が難航している中、警視庁刑事部捜査一課長の「小菅」から「本宮」に〈殺害された男の妻を洗え〉という情報が耳打ちされます。捜査本部の指揮系統を逸脱する指示でしたが、すぐに被疑者の逮捕につながります。「小菅」は何を狙っていたのか、その意図を測りかねているうちに第一部は終わります。

「第二部 顔のない目」では、警視庁組織犯罪対策部組対五課の警部補「植木範和」らは薬物の売人「森田」の監視を半年以上続けていました。「森田」が新木場のライブホールに向かい、コインロッカーに近づいたので、取引かと接近する「植木」でした。「森田」がロッカーを開けると、爆弾が爆発。容疑者の「森田」は死亡、「植木」は大けがを負います。
今回も(SSBC)の画像分析から、不審な花屋が捜査線上に浮かびますが、捜査本部にタレコミがあったことで、突然爆弾犯人が逮捕されます。捜査状況に不審に思う「植木」の前に、警視庁捜査一課の管理官となった「本宮」が現れます。第一部と第二部はつながっているのが、読者としてわかります。

そして単独事件の短編かと思われた第一部と第二部を引き継ぐように「第三部 蜘蛛の背中」が始まります。あえて第三部の筋はふれません。「読後、あなたはもうこれまでの日常には戻れない」という帯の文言は、けっして大げさではありません。573ページの長編を読み終えると、「もしかしたら日本で現実に起きているのでは」というなんとも〈嫌な現代的な課題〉を提示された結末に「う~~ん」というため息とともに読み終えました。
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今年の読書(75)『駅の名は夜明け』髙田郁(双葉文庫)

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今年の読書(75)『駅の名は夜...
本書『駅の名は夜明け 軌道春秋Ⅱ』は、短編集『ふるさと銀河線 軌道春秋』の続編として、9篇の短編集が収められ、2022年10月16日に文庫本として発売されています。

今回も、ほっこりとする群像劇の『ミニシアター』を含み、思わず涙する感動の、夫婦・親子の家族ドラマ9編が収められています。

◆『トラムに乗って』
7歳で亡くなった娘のことが忘れられず、新婚旅行で楽しい思い出があり、娘に語っていたウィーンの街へ離婚を覚悟して旅立った「真由子」でした。「私も行ってみたい」という生前の娘の言葉に応えるためにウィーン街へ。そのウィーンの街を一周するトラム(路面電車)が物語に彩りを加えて物語が展開します。
◆『黄昏時のモカ』
前『トラムに乗って』で、空港で出会った72歳老婦人「美津子」が主人公。夫と金婚記念に訪れようと思っていましたが、その夫は5年前に亡くなり一人で訪れたウィーンの街での出来事。親切に観光案内をしてくれる青年「クラウス」を、何か企む詐欺師ではないかと思いながらも、心を通い合わせることになります。
◆『途中下車』
中学から高校と「無視」される〈シカト〉のイジメに悩む女子学生「亜季」は、父が亡くなったこともあり、我慢の日々から脱出したく北海道の祖父母の元に行って新しい高校に転校します。その転校の初日、「無視」されたイジメがフラッシュバックして途中下車。そこで出会った昔国鉄職員で今はレストラン「駅舎」を営む2人の男性に出会って話を聞いてもらう。「目的地に行くために必要な途中下車もあるさ。疲れたら、降りていいんだよ。」「次の列車は、必ず来るからね。」と、前向きに進む希望の言葉に励まされます。
◆『子どもの世界 大人の事情』
「ふたりの心の中に氷が張ってしまって・・・」と、両親が離婚した小学4年生の少年が主人公。別れた父と語り合っていたオホーツクの海を見たくて一人で旅に出ます。旅先のレストラン「駅舎」の前の海を見て「春になったから氷は解けているよ」と父に電話。父は子供の旅先に駆けつけます。感動的な父と子の信頼関係を描いた物語。
◆『駅の名は夜明』
パーキンソン病と認知症の妻を介護する老老介護の物語。夫もまた慢性心不全を患っています。ずっと貧しかった生活、元気な時に妻が時刻表だけで旅を思い浮かべて楽しんでいた九州へ、無理心中の旅に向かいます。人生を終わらせるには、この静かな駅がいいと降りた駅の名は「夜明」。なぜかそれに光明を感じ、何事にも反応しなかった車椅子の中の妻が「おうちに帰ろう、ふたりで」という言葉に、また一緒に生きる希望を見いだします。
◆『夜明の鐘』
雨女の2人の旧友が、新神戸駅からまたまた雨女らしく台風直下の九州への旅にでます。それぞれが、それぞれの事情を抱えての再会。そんな中年女性2人の物語でした。新神戸駅らしく駅弁「ひっぱりだこ飯」の描写場面ではニタッとさせられました。
◆『ミニシアター』
列車内の変な悪臭から物語は始まる。犯人は老女がカバンに入れて持ち込んだネコ。乗客は迷惑行為を責め立てるが、老女の持ち込んだ猫の事情を知り、徐々に同情の気持ちにかわり、車掌に見つからないように、それぞれが画策する心情になる。そして車掌まで最後は粋な計らいをして物語が終わります。
◆『約束』
駅ゾバ店で働く読書好きの50歳の「久仁子」は、踏切で自殺をしようとした男を助けますが、その男は憧れの作家でした。助けたことが縁となり、やがて10歳年下のその男と結婚しますが、長続きせず2年後にまたもとの駅そばの店員に戻ります。別れた作家も生活が乱れて筆は進まず、出版社からも見放されてしまいます。2年後、作家は駅ソバ店を訪ね、再び「久仁子」と再会します。
◆『背中を押すひと』
11年前に国鉄マンだった父と喧嘩をして、俳優になると家を飛び出した「時彦」は、役者の芽が出ず大道具係をしています。医者になっている妹「路」から父が余命のない癌だと知らされ、一度でいいから家に帰って来てほしいと懇願されます。錦を飾れぬままに「今度は主役になるかも」と偽り実家に帰ります。そこでの、母との会話や、病の父との思い出の場所に父を背負って歩いたりしながら、背中の父の言葉から生きる希望を見いだします。
 
どの短編も、『 ふるさと銀河線 軌道春秋 』同様、心温まる結末で、思わず涙腺がゆるむ感動の物語です。
#ブログ #文庫本 #読書 #鉄道

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今年の読書(74)『野良犬の値段(下)』百田尚樹(幻冬舎文庫)

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今年の読書(74)『野良犬の値...
6人のホームレスを誘拐したという犯人が、身代金を請求した新聞社は支払いを拒否すると、一人の切断された〈生首〉が渋谷駅前に置かれているのが発見されます。

SNSを使った「誘拐サイト」はイタズラではないことが分かり、警察は本腰を入れて捜査に乗り出しますが、犯人像は浮かび上がりません。その後も続けて、大手新聞社とテレビ局に誘拐犯から身代金請求のメールが、時期を合わせたように届きます。

最後の結末に至る過程は、一気読み必至で、ネタバレになりますので書けませんが、警察と、大手新聞社とテレビ局、誘拐犯との三つ巴の展開が繰り広げられていきます。

『野良犬の値段(上)』の冒頭で登場したネットオタクの青年が重要な場面や、同じく定年まじかの刑事「鈴村」が、鋭い捜査をするのかと期待していましたが、定年になり事件未解決後の最後に登場する場面など、よく考えられている構成でした。

解説者の<門田隆将>氏は映画化を希望されており、わたしも面白いだろうなぁと思いますが、マスコミを敵に回した内容では、実現が難しいようです。
#ブログ #文庫本 #読書

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今年の読書(73)『野良犬の値段(上)』百田尚樹(幻冬舎文庫)

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今年の読書(73)『野良犬の値...
<百田尚樹>が「ミステリー」を書いたという帯の文言で手にしました『野良犬の値段』ですが、2020年12月に刊行され、2022年5月15日に文庫化に当たり(上・下)2分冊で発売されています。

突如ネット上に「誘拐サイト」が現れます。誘拐されたのは、身寄りのない6人のみすぼらしいホームレスでした。
定食屋の店員「佐野光一」は、一番最初にネットを見つけ、ツイッターで注目を集めたいがために、誘拐犯人の一味の振りをして事件をあおりますが、間もなく警察の御用となってしまいます。

ツイッターやメディアが「誘拐劇」の話題で盛り上がる中、事件かイタズラなのかわからない状況で、警察も無視するわけにもいかず、切れ者刑事「鈴村」たちは、捜査を始めます。

半信半疑で捜査着手の警察、メディア、ネット住民たちを尻目に「誘拐サイト」はなんと、
被害者たちとは何の関係もない、大手常日新聞社に、「身代金を払わなければ、誘拐した人物を殺す」という要求をしてきます。

新聞社が支払いを拒否すると、なんと犯人側は、6人の一人「松下和夫」の切断した「首」を渋谷のハチ公前に置くという手段に出るといういい場面で(上巻)は終わります。

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今年の読書(72)『月夜の羊』吉永南央(文春文庫)

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今年の読書(72)『月夜の羊』...
<吉永南央>の「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズも第1巻の『萩を揺らす雨』に始まり、本書『月夜の羊』でシリーズ9巻目になりました。2021年10月8日に単行本が刊行され、2022年10月10日に文庫本が発売されています。

コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営む「杉浦草」は、秋のある日、道端で「たすけて」と書かれたメモを拾います。
折しも紅雲町では14歳の女子中学生「渡辺聖」が行方不明中でした。メモと関連づけ、誘拐・監禁を視野に警察も動き出しますが、直後に少女は、離婚した東京の父親の所に家出とわかり、無関係なメモの件はそのままになってしまいますが、「お草」は気がかりでした。

腑に落ちない探求心旺盛な「お草さん」は周辺をあたり、鍵のささった玄関が気になり、開けてみますと独居の老女が自宅玄関で倒れているのを発見、救助します。ところが数日後、郵便物の整理で留守のはずの老女宅に入ると住宅内に人の気配を感じます。

紅雲中学校の校則問題や引きこもりの息子の問題、従業員の「久美子」と母親との問題、親の介護や「8050問題」に悩む人びとに、「お草さん」の甘いだけではなく厳しさも伴う行動が、5章の連作短編で繰り広げられていきます。

紅雲町の季節の流れを背景に、町内会の出来事にほっこりさせてくれる「お草さん」は本書でも健在でした。
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今年の読書(71)『鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 稲村ヶ崎の落日』鳴神響一【文春文庫】

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今年の読書(71)『鎌倉署・小...
本書『鎌倉署・小笠原亜澄の事件簿 稲村ヶ崎の落日』は、『偽りの捜査線 警察小説アンソロジー』(文春文庫)にも収録されています『虚飾の代償』の主人公「小笠原亜澄」と「吉川元哉」の刑事コンビが登場、2022年10月10日に文庫本書下ろしとして発売されています。

鎌倉山にある豪邸で95歳の文豪の変死体が自宅の密室状態の書斎で発見されます。捜査一課の「吉川元哉」巡査長は、鎌倉署の2歳年下で階級は上の「小笠原亜澄」巡査部長とコンビを組んで事件の解決に奔走します。

捜査の過程で、完成しているはずの『稲村ヶ崎の落日』の原稿が無くなっているところから物語は、鎌倉を舞台に進んでいきますし、「吉川元哉」と「小笠原亜澄」は鎌倉にある商店街での幼馴染という設定です。幼なじみの「小笠原亜澄」は年下なのに小生意気で口うるさいのですが、抜群の推理力の持ち主です。

『脳科学捜査官 真田夏希』(角川文庫)シリーズの<鳴神響一>の、警察小説の新シリーズが登場のようです。
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今年の読書(70)『神域』真山仁(文春文庫)

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今年の読書(70)『神域』真山...
本書『神域』は、2018年4月から2019年11月まで『サンデー毎日』にて連載され、2020年2月に毎日新聞出版より上下2冊の単行本で刊行、2022年10月10日に文春文庫本1冊(519ページ)として発売されています。

アルツハイマー病の特効薬と期待される奇跡の細胞「フェニックス7」が、世界的なIT企業を一代で築き上げた「氷川」の助力を得ることに成功した「篠塚」と「秋吉」の2人の日本人研究者によって開発されつつありました。それは、不可能とされた脳細胞を再生させる画期的な発明となるはずだでしたが、高血圧や糖尿病などの疾患で起きる副作用がネックとなり、実用化はまだ無理な段階でした。

そんな折に、認知症を患った高齢者が相次いで行方不明となる「事件」が発生。2・3カ月後に遺棄死体で発見される事例が相次ぎ、所轄の警察は捜査に乗り出しますが、思いもよらぬ事実が浮かび上がってきます。

綿密な取材に基づいたリアルな描写と、巧妙なストーリーテリングは、いま正に起きている問題の核心に迫ります。

最先端の再生医療につきまとう倫理問題、超高齢化社会の深刻な現実を突きつける介護問題、新薬開発をめぐる巨大な利権問題、それを奪い合う国際間の熾烈な競争。図らずも、新型コロナウイルスの感染拡大と治療法をめぐって浮き彫りになった課題や医学界の構造的な障壁ともリンクする内容となっているのに驚きます。

「再生医療は救世主か。悪魔か。」と帯にも書かれていますが、もしも、副作用や未知のリスクなどのマイナス要因があったとしても、そこに一類の望みを期待する患者や家族に対して「ノー」とつきつけられるのか? この小説が提示するのは、まさに生命に対する究極かつ苦渋の選択です。「氷川」は自らのアルツハイマーを治すべく巨万の資金を提供、「篠塚」はアルツハイマーを患った祖母の現状を子供心に目撃、何もできない医療学者の父を軽蔑して臨床医となり新薬の開発に情熱を傾けています。

医薬品としての開発は「スピード」か「安全」かの問題も興味深く読めました。物語の中では、せっかく日本人が開発した「フェニックス7」について、日本での認可のスピードが遅いために「実用化の甘い汁」をアメリカに奪われそうになります。研究者としては治験許可がすぐ出るアメリカに研究を移すのもうなづけます。

人類として脳科学の探求と治療は、神の領域と割り切れるものではなく、尽きることのない研究とジレンマの両輪で我々の目の前を疾走し続ける問題を考えさせられる519ページでした。
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