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50歳からの起業 ー シアトルから福岡へ

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プロフェッショナルの条件 2 − 新社会の主役

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  IT革命、イノベーションという言葉が闊歩した1990年代、先進国では情報社会にはいったといわれていた。この情報社会もドラッカーの言葉を借りれば、知識労働者による新しい組織社会の時代の到来だともいえるのではないだろうか。
  公共社会や家族が安定を求めるのに対して、この知識組織は不安定的要因であり、両者の間には緊張が生まれる。個々の知識労働者だけでは、何も生まれないために、個々が結合する=組織化されることによって初めて生産的な存在になる。このとき組織は、成果を達成する機能のもとに形成される。組織の価値観もその機能によって決まるからである。これが一般的社会との間に緊張が生まれる背景となる。例えば、組織も雇用、利益などを社会にも還元する大きな力を持ってくるとその影響も多大になってくる。しかし、その目的が成果追求という機能を基盤としているところで、公共社会とは全く相容れない存在となる。
  一方、今後の組織では、成功の延命を図るのではなく、イノベーションという創造的破壊に取り組むことを求められる。イノベーションを日本語では「革新」と訳されている。つまり改善にもとづく新しい創造というニュアンスを感じる。一方、中国語では「創新」と訳している。イノベーションはシュンペータによって定義されたが、ドラッカーのいう知識社会のイノベーションは中国語の「創新」という言葉のほうが的確に表現しているように思う。つまり既存の考え方、あり方、製品などに囚われない全く新しい創造、つまりドラッカーのいうところの創造的破壊に当たる。例えば、世界の「トヨタ」も最初は自動織機の「豊田」としてスタートしている。機織と自動車には全く接点がない。破壊的創造、大きなパラダイムシフトを生むのも知識社会であろう。
  しかし、この創新にはスピードが求められる。そのために組織には迅速な意思決定が不可欠になり、権限委譲という分権化が組織体系のなかで求められる。機能のもとに形成された組織が、分権化のもと迅速に成果を出しかつ公共社会や家族という集団との緊張を解くには何が求められるのか?それは組織の社会における使命がそれである。いわゆるMission Statement(企業理念)である。20代の若い頃、商談で日本メーカーの会議室や工場に行く度に額縁に飾られた企業理念などを見たときには、感動や理解より泥臭さを感じていた。しかし、8年前シアトルで会社を起こした時に、この企業理念を重要性を痛感した。それは、社会における使命のもとに、素晴らしい個々の労働者が組織には集まるからだと考えている。組織の機能の目的は、多様化、分散化されることで成果をあげる能力が破壊されるとドラッカーは言及している。つまり、目的は明確で一つであることが望まれる。分権化された組織のなかれ、その目的を一つにつなぐのがこの使命だと考える。
  この時、組織を形成する知識労働者は、組織に依存しない。上司と部下と関係でなくチームという今までの組織社会に前例がない集団になるとドラッカーは述べているが、このブログの最初で稲盛氏のアメーバー組織論がこれに当たるであろうし、自分自分が標榜するビジネスモデルの水平分業という餅屋は餅屋に任せる協業体制がまさにそうした組織であろうし、そういう意味では、自分自身の目指す方向性に改めて自信が持てた。
  ドラッカーは著書のなかでこう続けている。先進社会の特性は、力の源となっている社会の多元性が、単一目的の専門家した無数の組織が機能することによって、初めて可能となる。それらの組織は、専門化した独立の存在として、社会やCommunityの全体についてではなく、狭い範囲の使命、ビジョン、価値観を持つときに初めて大きな成果をあげる。
  ここはとても重要だと思う。とかく使命、ビジョンというと壮大なことを考えそうであるが、組織における使命は、その組織集団の手の届く範囲内のものであることで初めて成果を達成する実感が伴うのではないだろうか?成果が出ない組織は存続できなし、成果を実感できない使命では、個々は混乱するだけになる。この辺りが禅、儒教という東洋思想を基盤背景とする日本人、日本企業が一度超えなくてはならない壁かもしれないと実感している。つまり、己の心のうちの成果ではなく、組織、社会に対しての成果である。本を読んだり、只管打坐ではなく、作務という行動が求められる部分といえば良いだろうか。

Foot note: Wikipedia
イノベーションとは、新しい技術の発明だけではなく、新しいアイデアから社会的意義のある新たな価値を創造し、社会的に大きな変化をもたらす自発的な人・組織・社会の幅広い変革である。つまり、それまでのモノ、仕組みなどに対して、全く新しい技術や考え方を取り入れて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすことを指す。
#エッセイ #コラム #本 #詩 #読書

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